オーディオ機器としての性能を重視したAVマスター
まず2年ぶりにAVナビをモデルチェンジしたケンウッド。新モデルのHDV-909DT(オープン価格)は、サブネームに「AVマスター」と謳うだけあって、充実したAV機能が魅力だ。音質にも力を入れていて、一般的なAVナビがカーナビ部を中心に開発し、空きスペースにオーディオ部を加えたというイメージならば、HDV-909DTはオーディオ部はオーディオ機器を設計する手法で作り、ナビ部と合体させたというイメージだ。ケンウッドHDV-909DT(オープン価格) |
それはオーディオ部とナビ部を完全に独立させた無干渉セパレートシャーシ構造を採っていることからもわかる。ナビの基板もオーディオ基板も同じシャーシに組み込まれた一般的なAVナビと異なり、ナビ部が発生した高周波ノイズがオーディオ部に影響しにくい構造なので、高音質が望めるというわけだ。
ほかにもCDの2倍にあたる88.2kHzでオーバーサンプリングすることで、よりきめ細かく滑らかな信号の量子化が可能なサンプリングレートコンバーターを採用したり、量子化ビットをCDの16ビットから24ビットに高めることでレベル軸での改善を図るなど、音質を追求した設計。さらにデジタルオーディオデータの演算処理には処理能力が高い浮動小数点型オーディオDSPを採用し、デュアル32ビット150MHzのハイパフォーマンスDVDプロセッサーを搭載するなど、数々の高音質化技術を投入している。
USBからHDDに動画を転送できる!
デジタルメディアへの対応も充実している。市販AVナビの中で現時点では唯一、HDV-909DTだけが対応しているのが、USB経由で動画をHDDへ転送できる機能。パソコンに保存している動画ライブラリから、車内で見たいものを選びUSBデバイスにコピーしてHDV-909DTに差し込めば、ナビのHDDに動画が取り込まれ、いつでも車内でその動画を楽しめるようになる。転送可能なファイル形式はDivX。60分の動画なら10分で転送でき、最大約20時間分の動画をHDDに保存可能だ。またUSB経由だけではなくCD-R/RWやDVD±R/RWからの動画転送もできるし、圧縮音源や静止画の転送も可能。転送可能な圧縮音源のファイル形式はMP3/WMA/AACで、アルバム1枚なら、約1分で素早く音楽の転送ができる。HDDへの収録曲数は、最大で約4500曲だ。静止画はJPEG/BMP/PNG/GIF。アルバムジャケットのイメージデータを取り込み、音楽とリンクさせることもできる。さらにCDの高音質ダイレクト録音にも対応している。
地デジはフルセグ対応、iPodは動画も見られる
DVDドライブはCPRMに対応したDVD-R/RW・VRモード再生が可能。地デジチューナーはフルセグ対応の4チューナー+フロント4ダイバーシティアンテナ方式で、B-CASカードまで本体に内蔵した仕様だ。iPodへの対応だが、別売の専用インターフェースケーブルKNA-i909(6,825円)を使えば最新のiPodやiPhone3Gを接続して音楽&ビデオ再生、ナビのタッチパネルでの操作、充電が可能。PinP機能で地図とiPodの動画ファイルを同時に画面表示することもできる。さらにモーションEQやデジタルタイムアライメント、デジタルクロスオーバー、SRS CSオートモーティブ&SRS WOW HDといったサウンド調整機能が豊富など、音に関する部分は、語ることが山ほどあるHDV-909DT。カーナビ部に関しては、他社のモデルにない独自というほどの機能の採用はなく、使いやすさとわかりやすさを高めるべく、カーナビとしての基本機能に磨きをかけたという印象。ハイウェイモードで、SA/PAの混雑状況がわかったり、スマートICに対応したり、抜け道探索やボトルネック踏切表示を採用するなど、実用性は向上している。
モニターの逆チルト機構などうれしい機能も
また細かい部分だが、モニターが逆チルトできるのは、ケンウッドならでは。インパネの傾斜がきついクルマに2DIN一体型のAVナビを装着すると、画面が反射して見えにくいので、画面を起こす方向に調整したいケースもある。ところが一般的な2DIN一体AVナビは、画面を寝かす方向には調整できるが、起こす方向には調整できないのだ。その点、HDV-909DTは逆チルトによって画面を起こす方向への調整が可能。このような細かい配慮がうれしい。カーナビが本当に必要なのはせいぜい月に1~2回で、多くの場合は地デジを見たり音楽を聴いたりAV機器として活用しているという人も多いと思う。それならば、カーナビの機能はベーシックながら、AV機能が充実しているHDV-909DTのような機器の選択は大いにありだと思う。
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