両側スライドドアのミドルサイズミニバン
アイシスはガイアの後継となるミニバンですが、トヨタのこれでもかといわんばかりのミニバン攻勢には驚かされます。日本の自動車市場で、軽自動車を除いてトラックなどを含めた登録車のうち、ミニバンは25%程度を占めるようになっています。そのミニバンの市場にシエンタからアルファードまでさまざまなモデルをラインナップし、50%以上のシェアを確保しているのがトヨタです。というか、トヨタの豊富な車種ラインナップがミニバン市場を成長させてきたといってもいいくらいでしょう。それに拍車をかけようというのか、さらにアイシスを追加してきました。微妙にサイズの違うミニバンを多数投入することで、全く隙間のないトヨタのミニバンラインナップが完成したといえます。
アイシスはガイアの後継モデルということもあって、ボディの基本は5ナンバーサイズに抑えられています。一部のグレードはワイドタイヤ&フェンダーにより3ナンバーボディになっています。搭載エンジンも1800ccと2000ccですから、基本が5ナンバーであるのは変わりません。トランスミッションは1800ccが4速ATで2000ccは7速のシーケンシャルモード付きのCVTとなります。
アイシスでは、左側の前後ドアにBピラーを内蔵する設計にしてラウムと同じピラーレスの大きな開口部を作っています。パノラマオープンドアという名前ですが、これによるアクセスの良さとユーティリティの高さは特筆モノです。新しい特徴を持つ小型ミニバンなので、これは相当に売れそうな感じ。178万5000円から273万円という価格もそこそこ手頃な印象です。
発表会で見たときから売れそうなミニバンだなと思っていたのですが、実際に乗ってみてますますその印象が強くなりました。アイシスは乗用車系ミニバンと1BOX系ミニバンの中間的なボディを持ちますが、その割に走りに関しては1BOX系の持つ違和感がほとんどなく、セダン並の走りが得られたからです。アイポイントはやや高めになるのですが、その割にコーナーでのロールが少なく安定した状態で走れますし、加減速をしたときの深いなピッチングもほとんど感じることがありませんでした。普通のセダンを運転するのと同じように気持ち良く走らせることのできるクルマです。
パワートレーンは、直噴の2Lエンジン+7速マニュアルモード付きのCVTと1.8Lのハイメカツインカム+4速ECTの2通りです。2Lエンジンはトルクの余裕があり、無段変速のCVTと合わせて滑らかな走りを実現しますし、7速マニュアルモードを使っての積極的な走りも楽しいものです。一方1.8Lエンジンは実用性の高さが特徴で、CVTとは違う自然な走りのフィールが得られます。山道ではもう少しトルクの余裕が欲しいと感じるシーンもありましたが、ファミリーユーザーが普通の使い方をする範囲では全く問題ないと思います。価格設定もけっこう割安感のある水準に抑えられているので、相当に売れるのは間違いないと思います。
トヨタでは最近マイナーチェンジを受けたノア/ヴォクシーが好調な売れ行きを見せていますし、ウィッシュなども安定した売れ行きを続けています。アイシスが出ることで、イプサムも含めて一定の影響を受けるでしょうが、トータルでトヨタのミニバンのシェアが高まるのは確実です。最初にアイシスを見た瞬間には、トヨタにはすでに十分なラインナップがあるのにまだ新しいミニバンが必要なのかと思いましたが、ほかのミニバンとは微妙に異なるサイズを持ち、圧倒的な乗降性の良さなど、ほかのミニバンにはない特徴を持つアイシスにはそれなりの存在意義があります。