スタートダッシュは強烈ではない。1速のギア比が高くなっているのに対して、最大トルクの発生回転数がやや上に移行しているためだ。でも2000回転あたりでターボが効いてからの加速は強烈。とくにGTと違うのは、5000回転以上でも吹け上がりが鈍らず、ストレスなくトップエンドを目指すことと、低く太い排気音がはっきり耳に届くことだ。さらにオーバーブーストが効く3速以上での速度の伸びは、格上のスポーツモデルを思わせるスケールの大きなものだった。
速さ以上に扱いやすさが印象的だったGTと比べると、こちらは演出を含めて、はっきりスポーツモデルであることが伝わってくる。ところが乗り心地は、GTとそんなに変わらない。サスペンションはスプリング、ダンパー、スタビライザーを専用としているにもかかわらず、段差のショックはそれなりに伝えるが、角はたくみに丸めてくれるのだ。でもハンドリングは、GTもかなりレベルが高かったが、GTiはその上を行く印象だった。
とくにリアのグリップが安定しているので、プジョーのよき伝統であるフロントの接地感を生かし、安心感とともにペースをグングン上げることができる。ディスクローターとキャリパーのピストンを大径化したブレーキの効きも、GTを確実に上回っていた。このハイレベルな走りに、目線が低くサポートがタイトなバケットシートがとにかく合っている。単に速く走れるだけではない。夢中になって走れるホットハッチだった。
これで300万円を切れば買い!といいたくなる207GTiだが、その価格は320万円と、GTより56万円も高い。シートからエンジン、そしてシャシーまで専用仕立てとしたコダワリは、たしかに走りの楽しさに結びついているが、そこまでハードな走りを求めない自分は、ガラスルーフの魅力もあってGTを選びたくなる。でも206RCに乗っているような生粋のホットハッチ好きは、逆にGTiじゃないとガマンならないかもしれない。いずれにしても悩む2台である。
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