その1時間後、第3ドライバーである自分の出番がきた。レーシングカーらしからぬやさしい座り心地のCX用シートに体を固定し、インパネから生えたシフトレバーを操って、空冷フラットツインのビートに心地よさを覚えながら、ピットロードを加速する。3年前より全然速いじゃん、と一瞬思った。でもそれが「2CVとしては」という注釈つきのものであることを、最初のコーナーでイヤというほど思い知らされた。2CVはあいかわらず、走るシケインだった。
3年前の記憶を必死に呼び起こす。コーナーはアウトベタが基本で、ライン変更は後続車がいないうちにサッとすませるなど、2CVで12耐を走るための作法がだんだんよみがえってきた。でもカラダはすぐに順応してはくれない。前半は3年前と同じように、4分を切ることができなかった。でも作法が身についてからは、ブレーキはよく効くし、コーナリングは素直だし、3年前とは別物になっていることに気づいた。それを利用して自分なりに攻めてみたら、いつしか3年前は夢だった3分台に突入していた。
その直後にセーフティカーが入ってしまい、1回目のドライビングはそのまま終了、になってしまったのだが、実はベストラップはその周回で記録していた。セーフティカーが入っているのにどうしてかって? 理由は簡単、後続車に道を譲る必要がないので、クリアラップがとれるのだ。すべてのコーナーで理想のラインがとれる。それでも前のクルマにはなかなか追いつかないのだが、けっこう気持ちいいひとときだった。
正午ごろにドライビングを終えたあとは、昼食~昼寝といういつものメニューをこなす。ところがその間、チーム深谷は大変なことになっていた。まずは106ラリーがオーバーヒートでリタイア。サクソはミッションオイル漏れがひどく、106ラリーのミッションを移植。一時は2位を走っていた106S16は5速の歯が欠けてやはりオイル漏れを起こし、修理後は下4段で走ることになった。無事に周回をこなしているのは2CVと106XSiだけだったのだ。