ボディは同じ2リッターエンジンを積むハッチバックより180kg重いけれど、加速は不満なし。体感的には同じ2リッターのC5に近い。クルマの性格を考えれば、これでじゅうぶんだ。ハンドリングはさすがクサラ一族。ロールはグラッといくタイプでないので不安がないし、ステアリングは正確で、フロントのグリップはしっかりしている。おかげで背が高いのに安心してペースを上げられた。
うれしかったのは乗り心地。背が高いクルマはベース車より固くなるのがふつうなのに、ピカソはタイヤサイズが185/65R15と、ハッチバックの195/55R15より細く高いおかげで、低速での当たりはむしろマイルドだ。そして速度を上げると、今度はロングホイールベースならではのゆったりした揺れでショックをいなしてくれる。これを広く明るい空間で味わうのだから、とにかくいやされる。
いまのシトロエンで、いちばんシトロエンらしいと思った。背が高いのにミニバンにしないというコンセプトは独創的だし、デザインはエレガントで、装備は遊び心いっぱいで、乗り心地は優しい。なによりもガラス張りのあの広い空間が、ほんとうの豊かさや心地よさを教えてくれる。シトロエンがこのクルマをピカソと名づけた理由が、なんとなくわかってきた。
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