ATに合わせて調達したエンジン

4WDシステムが、MTはDCCD式であるのに対し、ATのA-LineはVTD式となる。基本の前後駆動力配分は、MTが41:59であるのに対し、A-Lineは45:55となる。また、フロントデフがトルセンLSDかオープンデフか、リアデフがヘリカルLSDからビスカスLSDとなる

A-Lineに、もしも2ペダルMTがあったら、MTと同じ2Lのツインスクロールターボ付きのEJ20が流用された可能性も高いと思いますが、これらATの特性に合わせて、2.5Lのシングルスクロールターボ付きの専用チューンのEJ25が与えられています。排気量では約500cc上回るEJ25ながら、スペックは逆転していることに注目してください。
EJ20=最高出力227kW(308ps)/6400rpm
   最大トルク422Nm(43.0kgm)/4400rpm
EJ25=最高出力221kW(300ps)/6200rpm
   最大トルク350Nm(35.7kgm)/2800~6000rpm

排気量は大きいが、性格はおとなしめのEJ25ターボ。絶対的な性能の高さを追求するのであれば、やはりMTのEJ20にはかなわない
EJ20は、2Lのボクサーエンジンとして究極の性能を追求したエンジンなので、性格はけっこうピーキー。ところがEJ25は、2500rpmで最大トルクの95%を発揮し、2800~6000rpmという幅広い領域でずっと最大トルクを発生します。

ATというのは、Dレンジで走ると、基本的には任意に使いたいギアを選ぶことができません。ゆえに、回せば非常にパワフルだけど、いささかスイートスポットの狭いEJ20とは相性が悪い。もちろんマニュアルモードを使えば、ある程度は思ったとおりにギアを選べますが、それこそ「ATを選ぶ」という根源的な問題と相反してきます。できるだけフラットにトルクを発生するエンジンを、なるべく変速させないのが、ATのドライバビリティとしては理想的といえるでしょう。ただ、エンジン回転数が上がれば燃費も騒音も不利になるので、多段化が求められているわけです。


A-Lineの場合、5速ATと組み合わせるのを前提に、エンジンはより排気量の大きなEJ25をベースに、圧縮比を比較的高くし、大排気量ターボチャージャーを低いブースト圧で回すことで、全域でフラットなトルク特性を実現しています。市街地でも高速道路でも、アップダウンのあるワインディングでも、どこでもいたって運転しやすく、踏めばちゃんと期待に応えてくれる。その動力性能のもたらす感覚は、インプレッサの20GTよりもはるかに上だし、同じくEJ25を搭載し、絶賛されたアウトバックXTをも上回ります。やはりA-Lineは、あくまで「WRX STI」の一員に違いありません。

A-Lineが2ペダルMTでなくATであることにひけめを感じていた方は、とにかくディーラー等で試乗してみて欲しいのですが、その前か後に、ぜひ何かライバル車の2ペダルMT仕様にも乗ってみてください。ここで述べたことが、ご理解いただけるのではないかと思います。
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