ATならではの運転しやすさ
ATというのは、ご存知のとおり、動力源と変速ギアの間にトルクコンバーターという機構を持ち、それを油圧で制御して変速制御を行なっています。トルクコンバーターにはATフルードという液体があり、これが駆動力を伝達します。そのため、ロックアップ領域以外では少なからずスリップするので、MTのようなダイレクト感を得ることができないし、燃費面でも不利となります。その具合はコンピュータが判断するので、MTでのクラッチ操作のように、ロックアップをドライバーが任意に調整することができません。
一方、2ペダルMTというのは、ギアボックス自体はMTと同じで、クラッチの断続の操作を機械が行なうのですが、その部分がまだ発展途上の段階といえます。たとえば、微低速時の半クラッチの操作がスムーズでなく、とくに少しでも上り勾配がついている場所ではけっこう難儀します。MTに慣れた人がMTで半クラッチ操作を行なったほうがスムーズといえるでしょう。
また2ペダルMTでは、シフトチェンジのスピードも、非常に速いものから、船を漕ぐほど遅いものまでさまざまですが、シフトアップについては、もう少し速くてもいいかと思うものが多いのが実情です。最近では、人間業を超えたほどの速さを実現したものもいくつも出てきているので、進化していることは間違いありません。
その点、ATは圧倒的に運転しやすいことがメリットです。微低速走行時は、穏やかなクリープもあり、トルクコンバーターがマイルドに駆動力を伝えるので、あまり神経質にならなくても、ギクシャクすることはありません。もうひとつ、ATの大きなメリットは、踏んだ瞬間にドンと前に出る感覚があることです。これはCVTに対しても大きなアドバンテージなのですが、ATというのはトルク増幅作用を得ることができます。それがAT特有の、運転しやすさにつながっているのです。A-Lineもまったくそのとおりです。
ただし、マニュアルモードでのシフトチェンジについては、高性能な2ペダルMTに対してはだいぶ劣ります。ブリッピング(=空吹かし)については非常に素早いのですが、肝心のシフトチェンジがいまいち遅いのです。これは、制御云々よりも、現行のスバルATのハードウェア面での限界と思われ、割り切るしかない部分ではあります。
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