改めて「継続」を意識させられた。BMWはつまり、これまでと何ら変わらぬ思想でクルマ作りをしている、と。
新型5シリーズはこれまでの同社製プロダクトに比べ、かなりハイテク要素が増したが、だからこそ余計にそう感じたのだともいえる。
時間とともに自動車が進化したことによって、現代の自動車はライバルに対し、「性能」による大きな差を付けることが難しくなった。そこで最近では、メーカー独自、モデル独自の個性、いわゆるブランド性を強く打ち出す方向が顕著だが、BMWの場合はそれを地でいっている感が強くある。もちろんそれは、このメーカーにおいては以前から感じられたことだが、今回の5シリーズに触れるとブランド性の強調を改めて強く感じるのだ。
BMWのブランド性を一言で簡単にくくったときに、3シリーズから7シリーズまで、いや最近登場したX5などSUVも含めた全プロダクトをして「ドライバーズカー」という表現がなされることから分かるように、とにかく走りそのものが生み出す魅力を徹底的に追求していることで、実際にそれは多くの人に認知されている。
今回の5シリーズでも、そういう部分はある意味今まで以上に色濃く表現されていた。そして、そう感じさせる元となる今回の5シリーズのメカニズムにおける進化というのは、ほぼ全てが走りの魅力の追求=ブランド性強調の必要性から生まれているように感じるほどなのだ。
まずトピックとしてあげられるのが、フロントセクションをアルミとし、残りをスチールとしたハイブリッドなボディ構造。こうした解が出てくるのもやはり走りを徹底追求したからに他ならない。もはや5シリーズのサイズは、7シリーズのそれに近づきつつある。当然通常の軽量化では、車両重量は増加の一途をたどるしかない。そこで今回フロントセクションを総アルミとすることで、車両重量は従来と同等(日本で現在販売されている日本仕様の530iと欧州仕様の新型530iの車重を比較すると、新型が10-20kg軽い)を確保している。
新型(欧州仕様530i)の全長4841mm×全幅1846mm×全高1468mmというサイズが、先代モデルの全長4775mm×全幅1800mm×全高1435mmと比べ、全長で66mm、全幅で46mm、全高で33mmも拡大されていることを考えれば、実質的には軽量化といえる。同時にフロントセクションのアルミ化は前後重量配分にも貢献しており、相変わらずの優れたバランスを実現する要素となっている。
このハイブリッド構造を実現するために、BMWはアルミとスチールの結合部分に、新たに開発した絶縁性接着剤を用い、それを結合部に全面塗布した上で50mm間隔のリベット結合を行う他、スプリングサポート部もアルミダイキャスト製とするなど新たな試みを行っているが、そういう発想もつまりは走りを追求することから生まれている。
同時のこの構造は、様々なところへのアピールも忘れていない。そういう部分もBMWはうまい。アルミを用いてフロントセクションを作り上げたことは、同社においてアルミボディの製造が可能であることを暗に語っているとともに、このクラスにおいてもさらに根本的な技術革新が必要であるような雰囲気をも作り上げている。しかもこの手法が、ボディ構造の全てをアルミ化してしまうよりも、さらに我々に話題をもたらすものであることすら理解しているように思える。ハイブリッド構造をフックに、様々なところへの影響を与えているように感じる。
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