では、各部分が複雑に絡みあった時、どんな風に感じるのかを記していこう。
ハンドリングは一言で言うならば、ロードスターよりも上質であり、RX-7よりも扱いやすいもの、といえるだろう。つまりRX-8のハンドリングというのは、まずロードスターやRX-7で実践されてきた人車一体感を確実に実現した上で、ロードスターよりは重厚さや濃厚さがあり、RX-7ほど鋭いわけではないがその分コントロールしやすいものとなっている。これはRX-8というクルマの価格帯、キャラクターを考えれば、まさにこの場所しかないという着地点である。
4人を乗せるスポーツカーだからこそ、あまりに軽快過ぎてはいけないし、あまりに過激過ぎてもいけない。ある程度の分別ある重みと、寛容性が必要なわけで、それに見事に応えたものだといえる。
こんな風に書くと、中には意地悪に「結局中途半端なんでしょう?」と思う人もいるかもしれないがそれは大きな間違いだ。
事実このハンドリングのレベルは非常に高い。先に挙げたように、そこには人車一体という思想がベースとしてあるため、他の4人乗りスポーツセダンと比べた場合はもちろん、2シータースポーツと比べても遜色ないどころか、むしろ上回る部分さえ垣間見せる。
具体的に車名を挙げるならば、スポーツセダンのアルテッツァ、アコード・ユーロR、2シーターのフェアレディZ、S2000よりもバランスよく、気持ちよいハンドリングを有していると言える。これらの名前から、そのハンドリングがいかにレベルの高いものか分かってもらえるはず。さらに言うならば、ハンドリングはBMW3シリーズを、よりスポーティにした感じ、とでも言おうか。間違いなくそのくらいのレベルにある。
ただRX-7から乗り換えを考えている人にとっては、そのしなやかさがやや甘口に思えるかもしれない。しかし正面から比べてしまってはRX-8がかわいそうである。というのもRX-8はRX-7と違って、4ドアで4人乗りのスポーツカーであり、車重はRX-7よりも重い。
さらにホイールベースは2700mmとスポーツカーとしては非常に長いのだ。リアシートを+2的なものと考えて、その分パッケージングをスポーツに振ったRX-7とは成り立ちが少し異なる。その辺りを加味して考えなければ比較することはできないだろう。そしてその辺りを加味すれば、なるほどRX-7比でこのくらいの甘口な部分というのは、納得できるレベルにあると私は考える。
具体的には、RX-7よりもダイレクト感が薄れるということである。しかし仮にRX-7並みのダイレクト感をRX-8が有していたら、同乗者にはかなりツラいクルマとなることは間違いないだろう。だからこそ、ロードスターとRX-7の中間的、と私は記しているのだ。
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