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マツダMPVが搭載エンジンを一新

MPVが搭載エンジンを一新した。近々、登場するアテンザにも搭載される2.3Lユニットと改良型のV6の3Lユニットを搭載。足周りも大きく改良を加えて、走りは長足の進歩を遂げている。

執筆者:川島 茂夫


オデッセイなど同クラスに位置する上級ステーションワゴン型ミニバンのMPVがモデルチェンジを行った。外観や内装に大きな変化は見られないのだが、乗った印象はまったく別のクルマといってもいいほど変化している。

その大きな要因となっているのが、搭載エンジンの変更である。従来までは4気筒が2L、V6が2.5Lを採用していたが、このマイナーチェンジによって4気筒は2.3Lに、V6は3Lにスケールアップを行っている。同クラスでは標準的な排気量設定になったわけだが、この変化で排気量拡大分だけ動力性能が向上した、程度に考えるのは大きな間違いである。そんな程度ならば「別のクルマ」などという表現は使わない。

今までのエンジンは2Lは基本設計が古く、2.5Lは多気筒エンジンの質感にあまりこだわらない北米育ち(フォード製)で、共にガサツなエンジンフィールが難点だった。高回転のパワーも出ていないし、実用域のトルクにも余裕がない。要するに必要十分な性能が確保できていても、上級ミニバンらしいエンジンとは言い難かったわけだ。

しかし、新型は違う。どちらもエンジンフィールが滑らか。高回転まで回しても威圧感もガサツさもあまりない。穏やかに力強く、といったタイプなのである。とくに、4気筒車は変化が大きかった。

実は、このエンジンは近々登場するマツダの新型セダン「アテンザ」用に開発されたものなのだ。アテンザに採用されている可変バルブタイミング機構は省略されているが、マツダが満を持して登場させた新世代エンジンらしく、トルク特性もスロットルに対するコントロール性も素直なもの。癖がなく、どの回転域でも柔軟なドライバビリティを発揮する。これまでのマツダのエンジンは木訥、あるいは野武士的な感じで、洗練された印象に乏しかったが、このエンジンは現代的な洗練を感じさせるものである。

さらに予想外に良かったのが(マツダには失礼な表現だが)、フットワークである。サスペンション周りに補強を加えるなど、基本構造から手を入れたことが効を奏したのか、これまでの乗り心地やハンドリングの頼りなさが払拭されている。微小ストロークから深くストロークした時まで、一律な減衰感を保ち、コーナーでも直線でも、荒れた路面でも、安定した接地性を維持する。硬さで抑え込むようなところがないので、操安と共に乗り心地の質感も高まっている。

強いて難点を言えば、ロードノイズがあまり変わっていない。エンジン騒音が減少したことも影響しているのだが、相対的にロードノイズの透過感が強くなってしまった。実質な悪さをするようなものではなく、指摘するほどではないかもしれないが、他の走り全般が大きく向上しているだけに、ロードノイズだけが取り残されたように思えてしまう。

キャビンの基本機能は従来とほとんど同じだが、装備面で目玉商品がひとつ。パワースライドである。上級ステーションワゴン型ミニバンではMPVだけが採用し、狭い場所での乗降性などで利点のあるパワースライドドアだが、操作力が重いのが難点だった。それがパワースライドドアの設定で解決したわけだ。しかも、何と左右ドアに採用されているのだ。

MPVの登場当時ディーラーで試乗して、「車格の割には安いが、走りがいまひとつ」と考えた人も多かったのではないだろうか。そういった人は、一度でもいいから、新しいエンジンを得たMPVに試乗してもらいたい。「マイナーチェンジでこれほど変わるのか、MPVとはこれほどいいクルマだったのか」ときっと思うはずである。
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