走りは一言、爽快なスポーツである。
レネシスをコアとして成り立っているだけにRX-8が生み出す走りの世界というのは、相当にレベルが高い。しかもその上で、マツダがこれまで培ってきたものがソフィストケートされた形で存在している。
まずは走りにおける各部分を見ていこう。
第一に見るべきは操作系。これらの持つ感触が非常に良く出来ている。特に注目なのは、ラックドライブ式の電動となるパワーステアリングである。
通常電動パワステといえば、エンジンに対する負荷が少ない効率的なシステムである一方で、走りにとって重要なステアリング・フィールに関しては、自然なものを創出しにくいシステムである。特にステアリングを操作した時の反力は不自然になりがちであり、舵力の頻繁な変化や頼りなさなど、細かな不快感が複雑に絡みあうことで、結果リニアニティに欠けたフィールとなることが多い。
しかしRX-8のそれは、言われなければ電動パワステであることすら判断できぬほど「自然な」仕上がりが特徴だ。手応え、重み、フリクション感、回転感、正確性など、あらゆる部分において満足できるフィーリングを提供してくれる。ラックドライブ式電動パワステを構成するメカニズムは、新型アコードと同じものを用いているが、チューニングは独自のもので、電動パワステとしては非常に優れたステアリング・フィールを持つアコードよりも、さらに優れたフィールが実現されているといえる。
シフトも操作感は上々だ。ロータリーのモチーフを施したシフトノブは、非常に短く握りやすく、かつレバーそのものも短いため、ロードスターにも似たコクコクッとした感触を備えている。今回試乗したハイパワーバージョンに搭載される6MTは、現行ロードスターに搭載されるものと同じ。つまり、シルビアやアルテッツアなどと同じアイシン製である。しかし同じものを使っていても、やはりチューニングによって感触は変わる。その意味で言うとRX-8の6MTは、同じアイシン製の中でも最も優れたフィールを持っているといえる。
またペダル類もカッチリした剛性感と滑らかな踏み応え感などがABCで全て実現されており、きちんと操作することが可能だ。
次にボディ。剛性感はサイドにあれだけの大きな開口部を持っているにも関わらず、非常に高く感じられるものに仕上げられている。乗降時にドアを開け閉めした時には、やや安っぽい音が確認できたが、走っている時にそういったことは皆無で、カッチリした感じが伝わるものとなっている。
サスペンションは、ロードスターでいえば現行型のマイチェン以降、RX-7でいえば280ps達成のマイチェン以降で実現されてきた、「しなやか系」が踏襲されている。つまりある程度ロールを容認し、それによって路面をとらえ続けるセッティングである。
今回はさらにそのしなやかさに磨きがかかったという風に言うことができるだろう。
ブレーキは、アテンザ、デミオでそうしてきたように、初期から制動をしっかり立ち上げ、それを実感できるようにタッチも工夫されたものとなっている。コントロール性が非常に高く、特にスポーツドライビング時には、あとどれくらいブレーキが使えるのかを的確に伝えてくる情報伝達に優れたものとなる。
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