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新型に生まれ変わったらタイプRはどう進化したのか? 新旧インテグラタイプR比較(5ページ目)

2001年に新型に生まれ変わったインテグラタイプR。シビックに代わりホンダのワンメイクレースに採用されるなど、ホンダFFスポーツの頂点に立つ、インテグラタイプRの魅力に迫る。

執筆者:河口 まなぶ


その意味では新型が、いかに前後のロールバランスに優れたクルマなのかを思い知らされる。さらにブレーキは、効き/タッチの良さはもちろんだが、ペダルを介して伝える情報量と質が段違いだ。旧型でもブレーキングによるタイヤのグリップ変化や挙動が乱れる情報を伝えるが、新型はよりしっかりした感触と明確な情報伝達がある。

極端に言えば、足の裏から伝わる情報から、このブレーキにどれだけキャパがあり、どのくらいの踏力でどれだけ姿勢が変わるのか分かるほど。この辺りはさすがブレンボ製といえるところだ。

以上のように、シャシーから伝わる感覚の違いをまとめてみると両車の違いは明確となる。というのも旧型では「これ以上先に行くとコントロール不可能になる」といった具合で、クルマの限界を危機として一方的に伝える。一方で新型はクルマの限界を「これ以上先ではこうなるけどどうする?」といった感じで、ゆとりある対話として伝えてくる。

新型におけるこの対話の感じは、高剛性ボディによるしっかり感、そしてそこに取り付けられたサス類の確かな動き、加えて前後のロールバランスの良さなど、全てがステアリングを通して明確に伝わるところに理由がある。そう、新型がスゴいのはFFとしては世界一といえるステアリングフィールを持っていることである。シビックと同じプラットフォームながらもあえて油圧式のパワーステアリングを採用したことは正解といえる。

旧型のステアリングフィールもかなりダイレクトな感覚伝達性能を持つが、そこには基本設計の古さから来るどうしようもない雑味が含まれるのも事実。新型では、それが取り除かれた上で、必要な情報だけを伝える。

結果走りに何が生まれるか。それはドライビングそのものにおける質の違いだ。旧型は良いも悪いも含め、全てがダイレクトで走っている実感や操っている実感が相当に高い。騒音や振動を限りなく許しているが、それがゆえに熱いものを感じることができて楽しいし気持ちよい汗がかける。これはある意味20世紀の遺産と呼べる素晴らしいものだ。

では新型はどうだろうか? 旧型ほどダイレクト感はないが、情報はしっかり伝えられ、ドライバーに本当の気持ちよい部分だけを感じさせるマシンである。騒音や振動を効果的にカットすることで、純粋にドライビングそのものに集中させる。つまり旧型における操作では、容赦なく襲う揺すられなどの中でクルマを力でねじ伏せるような、格闘めいたものがあるのに対し、新型は格闘するのでなく、操作はあくまでクルマを制御することのためだけに行える。それは旧型の20世紀遺産に対し、21世紀のタイプRらしさということができるだろう。

こうした違いのどちらに共感するかは、あなたの持っている感覚次第だろう。あなたの持っている感覚によりマッチするクルマの方が当然エモーショナルなビークルとなる。クルマそのものの雰囲気からの熱さを好み、存在自体を愛するなら旧型のように思えるし、ドライビングそれ自体を愛するならば新型という風に思える。

(この原稿は、(株)ニューズ出版発行の新型インテグラ・タイプR パーフェクト
ガイドに寄稿した原稿を元に加筆修正を加えたものです)
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