タイヤのスリップと視界の悪化が雨の日の事故を招く!
雨の日は視界が悪い上に、タイヤが滑りやすく、事故の危険性が高い |
雨によって濡れた路面は、乾いた路面と比べるとどうしても滑りやすくなりますが、その度合いはタイヤのコンディションによっても大きく変わってきます。濡れた路面では、タイヤと路面との間にある水膜を取り除き、タイヤがしっかりと路面に接することで、グリップ性能を発揮しますが、水膜を取り除くにはタイヤの排水性がポイントとなります。
この排水性は、トレッド面に刻まれた溝の広さや深さによっても変わるもので、溝が深くその面積が広いほどより多くの水を排出することができます。そのため、水たまりなどの上を通過したときに、タイヤが浮き上がりグリップ性能が極端に低下するハイドロプレーニング現象を防ぐためには、当然しっかりと溝のあるタイヤの方が有利になるわけです。すり減ったタイヤでは、雨天時の高速走行が危険だと言われるのは、このあたりが原因となります。
また、タイヤ本来の性能も、濡れた路面での滑りにくさに大きく影響します。濡れた路面では、トレッドゴムの柔軟性が高いほどしっかりとグリップする傾向があるため、タイヤメーカーでは柔軟性を高めるための素材をトレッドゴムに採用するなどの対策を行っています。
近年のタイヤ開発では、転がり抵抗の低減や摩耗時の性能低下の抑制など、様々な要素が盛り込まれていますが、やはり濡れた路面でのグリップ性能をいかに高めるか、というのは変わらず大きなウェイトを占める要素となっています。そのため、特に高速走行を頻繁に行うユーザーなどの場合は、ウェット路面でのグリップ性能に優れた高性能なタイヤを選ぶべきです。
その他、タイヤの空気圧も濡れた路面でのグリップ性能に関係してきます。サーキット走行など、シビアにグリップ性能を追求するシーンでは、状況に合わせて空気圧を調整するということも積極的に行われています。例えば、比較的降雨量の多い状態では、空気圧を高めにすることで、タイヤの接地面積を減らし、接地している部分の面圧を高めることでグリップ性能を高める考え方があります。
逆に気温が低く、雨量も少ない状況であれば、空気圧を低めにし、トレッドゴムの変形量を増やすことでトレッド面の発熱を促し、グリップ性能を高めるという方法もあります。ただ一般道では、路面のコンディションも刻々と変化しますから、規定の空気圧をきちんと保つという考え方が基本となります。そして何よりも、摩耗の進んだタイヤは早めに交換することが、スリップを防ぐための最大の対策法といえます。
次ページでは、視界確保について取り上げます。