AT(オートマチック・トランスミッション)は、その作動の大半が「ATフルード(ATF)」の油圧伝達によって行われており、人間が操作する部分はセレクトレバーの選定くらい。あとはすべて機械が自動的に行っている。
ところが、外部からできるメンテナンスは「フルード量のチェック」や「フルード交換」くらいしかない。それ以外は分解・修理ということになってしまうのだ。だからこそ普段からのいたわりが大切!正常な状態に保つためには定期的なチェックが必須で、10万kmオーバーを目指していたなら、ATフルードを定期的に交換する必要もある。
ATフルードはトルクコンバーター作動時の高温(流動抵抗による摩擦熱によって高温になる)にさらされて変質し、時が経てば酸化もする。距離を走ればミッションの摩耗した金属粉(メタルパウダー)や遠心クラッチの摩耗粉(クラッチパウダー/バイクのような湿式多板の遠心クラッチが複数内臓されている)が混ざり込み、2~3万kmも走ると新品時に赤ワイン状だったものがドス黒く変色。焦げ臭い臭いが漂うようになり、泡立ちやすくなるため伝達効率が低下してくる。
そして、「シフトタイミングの狂い」や「シフトショック」、「レスポンスの低下」、「パワーロス」、「燃費の悪化」などといった不調が表面化。5万kmも走ってしまうと明確になってくるからだ。早い話しが、エンジンオイルと同様の劣化が進行しており、走行距離もしくは期間による定期交換が必須なのだ。このため、まだある程度の性能を維持している2万km走行もしくは1年を目安に定期的に交換したい。
なお、ATFの交換には専用の交換機が必要で、ドレンから排出させるにしてもリフトアップしてクルマの下に潜らなければならない。使用するATFの量も8L前後と大量。DIYでの交換は正直難しいため、素直にプロに依頼した方がよい。
●ATFチェンジャーンを利用した交換法
1.交換機をセットする
ATFチェンジャーには、レベルゲージ穴から吸引する「吸引方式」と、オイルラインの途中に交換機を接続することで循環させつつ入れ替える「循環方式」の2通りの方式がある。前者の場合、ATFのレベルゲージ穴に吸引ホースをセットし、吸引・充填を数回くり返す。後者の場合、まずリフトアップしてラジエーターに内臓されているオイルクーラーの接続パイプを切り離して交換機を接続する。
2スイッチを入れると自動的に入れ替わる
そして、スイッチを入ると汚れたATフルードが廃油タンクに溜りつつ、新品フルードが自動的に充填されていく。つまり、オイルラインに流れてくる汚れたATフルードを抜きながら、同量の新品フルードを送り出すわけで、交換効率は「吸引方式」の40~50%に対し、95%に達するという。
●ドレンから排出させる交換法
1.ドレンはミッションの真下にある
ドレンはミッション底部のオイルパンに設置されている。
.2.リフトアップしてドレンボルトを外す
リフトアップしてドレンの真下に廃油受けをセット。ドレンボルトを外して古いATFを排出させる。なお、このドレンから抜けるのはミッション内のATFのみで、オイルラインやトルクコンバーターの内部に残っているATFまで完全に排出させることはできない。
3.レベルゲージ穴からATFを注入する
ドレンボルトを組み付けたらリフトを下げ、レベルゲージ孔からATFを注入してエンジンを始動。循環して各部に行き渡らせてから量を確認する。交換効率を高めるなら、これを数回くり返す。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。