ガソリンエンジンで、電気の火花(スパーク)を飛ばして混合気を燃焼させるパーツがスパークプラグの役目ですが、時々アイデアを凝らした変わり種が誕生してきます。恐らく、日本にはまだ発売されていないと思われる、新種を見かけたので紹介したいと思います。
高性能への手法は細い中心電極
スパークプラグはガソリンエンジンに使われるパーツで、吸入行程で吸い込まれたガソリンと空気の混合気に電気火花を飛ばして着火させるという重要な役割をしています。これが不調になってしまうと、燃焼をミスしてしまう(ミス・ファイア)ので、エンジン出力が低下して排気ガスも汚くなってしまいます。もっとも、正常か不調という以前の性能向上策というのも昔から行われており、最近のトレンドは中心電極の極細化です。ちょっと興味のある方なら、「イリジウム・プラグ」の存在を聞いたり、使っている人も多いと思います。
その狙いは、電極を細くするほど一点にエネルギーが集中するとともに、電極に奪われる熱エネルギーが少なくなるので、その分「種火」としての着火性能がアップするというものです。昔から電極を細くすると良いことは分かっていましたが、それによって高温状況下の耐久性が低下してしまうので、イリジウムのように融点が非常に高い金属が上手に使えるようになるまで、待たなくてはならなかったのです。昔は、白金タイプが高級で長寿命の代表格でしたが、今や純正プラグやタクシー用までイリジウム化されています。
接地電極の多極化という手法もある
ところで、安定した着火性能を得るための手法として、電極の多極化が行われることがあります。通常は中心電極と接地電極が向き合った部分でスパークが飛びますが、接地電極を2極以上にすることで、一方の条件が悪くなった時に他方でスパークさせ、ミス・ファイアの低減と耐久性の向上を図るようにします。たまに見かけるのが2極タイプか4極タイプですが、昔は6だったか8極タイプというのが出ていたことがあります。さらに突き詰めると沿面放電という特殊タイプになり、これは中心から外周円の何処にでも火が飛ぶタイプです(冷え型、突起物がなく機械的強度に優れるなどの利点もある)。
中心電極側の多極化
さて、今回紹介するプラグですが、歯車のような中心電極から接地電極へ青白いスパークが飛んでいます(写真1、右はノーマルプラグ)。こういう多極化の方法もあるのかなと面白く感じました。でも、いかにも中心電極に対する後付け感があって、エンジン内で落ちたりしないのかと不安になったりします(市販バージョンは形状が異なる模様)。アピールポイントは、出力アップ、排気ガスのクリーン化、燃費節約などです。これは、9月にドイツ・フランクフルトで行われていた、アウトメカニカで発見しました。ちなみに多極化しても、全ての極で同時にスパークは飛ばず、好条件の1カ所に飛びます。
プラグ周りの混合気の流れは、吸入行程でのスワール(横ウズ)、タンブル(縦回転)、スキッシュ(圧縮行程でピストンと燃焼室で押し出される流れ)やスロットル開度との兼ね合いで、メーカーでも解析し切れていないところもあるようなので、この方法がどんな運転状況でもベストなのかは分かりませんし、混合気の流れ中にスパークがあると、かえって着火しにくい場合もあるようです。でも、ベンチャー企業のパーツでも、効果がありそうなら一度自分のクルマにも付けてみたいものだと思います。また、そういう(淡い)期待を抱かせてくれるのがプラグなんですね。
このプラグを作った会社は、エアクリーナーなどの吸気ダクトにウズを発生させて吸気効率をアップさせる「サイクロン」という用品を作っているところです。この、サイクロン自体は日本でも一部の用品店で販売されているようです。この手の製品も日本で数十年前に流行ったのですが、歴史は繰り返すというのがクルマの用品でもあるのだなと、懐かしい思いになります。社長は、もともと起亜のエンジニアだったそうです。サイトはこちらです(ハングル語)。