O君:::で、そろそろ走りのほうに話題を変えたいですけど。Kさんって、ひとつの話題で延々と話すから、いつも話が長くなって、そこんとこ、よろしくお願いしますよ。
K氏:::そういう言い方は・・・。まっ、ともかくだな、どちらもエンジンはV6だね。
O君:::アルファードには4気筒もありますが。
K氏:::アルファードの4気筒車を絡めて話すと、話が分かりにくくなるので、まずは最上級ミニバンの証、6気筒モデルで行こうよ。アルファードの4気筒車の話は、また後の機会でね。
O君:::エルグランドは3.5リッターで、アルファードは3リッターですね。パワースペックを見ても、エルグランドが優れている。
K氏:::そこはトヨタも凄く気にしているみたいで、アルファードがエルグランドよりも軽量なところを盛んにアピールしていた。
O君:::車重ですか。えっと、あっ本当だ。2WD車同士で比較すると、アルファードのほうが150kg以上軽い。
K氏:::因みにパワーウェイトレシオ(車重/最高出力)は、エルグランドもアルファードも約8.4kg/ps。端数分エルグランドが良いかなっていう程度なんだけどね。
O君:::トヨタの言っていることももっともだ、っと。
K氏:::でも、トルクウェイトレシオ(車重/最大トルク)になるとエルグランドが約55.6kg/kg-mなのに、アルファードは約60kg/kg-mになって、8%くらいエルグランドのほうが優れている。
O君:::ちょっと待って下さいね。最高出力と最大トルクの発生回転数を見ると、エルグランドは6000の3200、アルファードは5800の4400でしょ。エルグランドのほうが太いトルクを幅広い回転数で発生していることになりませんか。こいつは相当有利な気もするんですが。
K氏:::トルクカーブにもよるが、最高出力と最大トルクの発生回転数は離れているほどフラットトルクということになる。O君の言っていることは正しいな。
O君:::では、動力性能はエルグランドの勝ちですね。
K氏:::そう言っちゃうと、大差があるようだが、運転した印象でそんなに大きな差を感じたかい。
O君:::そこなんですよ。ボクが引っかかるのは。アルファードの加速感って軽快だったじゃないですか。1.8トン以上のクルマって印象はなかった。車重を感じさせるということではエルグランドのほうがあった。数字と印象が違っている。
K氏:::パーシャルスロットルでの反応とか、回転数との高まりと加速感、それに高回転を回した時の振動や騒音によるドライバーに与えられる精神的なストレスとか。そんな要因で体感する動力性能は相当違ってくる。
O君:::アルファードは速いような感じがするけど実際には遅い、って言いたいんですか。
K氏:::それは全然違っているな。パーシャルスロットルでの軽くアクセルを踏み込んだ時に、操作と加速感が一致するのは動力性能の評価では重要なポイント。余剰出力が大きい2車なので、全開で加速するなんてことは、実際には少ない。まっ、要するにドライバビリティの問題ということになるが、そこにストレスがない。ついでに言えば、高回転まで回しても滑らかで軽く回るから、常用回転レンジを高くしても、無理をさせている感じがない。
O君:::エルグランドのほうがラフな印象はあった。巡航中はけっこう紳士的なんだけど、登坂とか追い越し加速でアクセルを踏み込んでキックダウンさせると、巡航中とのエンジンフィールのギャップが大きめでしたよね。それほど嫌な感じはしなかったけど、走り全体を通すと、やっぱりアルファードのほうが紳士的だった。
K氏:::ATのマネージメントの違いもあるけどね。アルファードはキックダウンでも、急激な変化を抑えるようになっている。滑らかだな。しかし、蹴り出し感というかダッシュ感はエルグランドのほうがいいだろう。短い直線で追い越す時なんか、エルグランドみたいなダッシュ感のほうが心強かったりする。人間の感覚なんて、そんなもんだ。
O君:::同じことをやっていても、状況によって、印象も変わるってことですね。
K氏:::それにエルグランドのATは5速型で、アルファードは4速型。ひとつのギア当たりの守備範囲がエルグランドのほうが狭い。シフトの頻度はエルグランドのほうが高くなる。それにエルグランドの場合、キックダウンの急加速では飛び越しダウンシフトをすることもよくある。
O君:::つまり、同じようにキックダウンさせても、アルファードならば4から3速なのに、エルグランドのほうは5から3速になるから、エンジンフィールのギャップとかで変速感が強く出てしまうわけですね。
K氏:::まっ、そういうこと。ダッシュが効く理由でもあるな。ついでに言えば、アルファードはエンジンが高回転でストレスが少ないことで、ギアがひとつ少ない分のハンデをカバーしている。完全にはカバーできていないけどね。