重い車体をエンジンフィール荒げることなく加速させる。全開で加速した時の力強さも最上級ミニバンに相応なレベルにあれば、市街地走行のように低中速での微妙な加減速を伴う走り方でも神経を使うことなく、素直なドライバビリティで応えてくれる。きかん坊だった少年が、深みのある大人へと育ったような印象さえ受けてしまう。
乗り心地はエンジン周りの印象以上に乗員への気配りが感じられた。先代の硬く、荒れた路面では飛び跳ねるような荒っぽさはまったくなくなっている。リヤサスもしっかりと沈み込みのストロークを確保し、後軸上に位置し、最も乗り心地に厳しいサードシートでも身体に応えるような厳しい揺れは感じない。サードシートの乗り心地は、大勢で乗るためのミニバンと沢山の荷物を積むためのバン(商用車)を区別するための要点のひとつであり、荷室に座席を取り付けたような乗り心地ではミニバンらしいとは言い難い。その点で、エルグランドは、このモデルの乗り心地で「人が集うためのミニバン」であることを明快に主張している。
サードシートの乗り心地の確保は、操安面にも少なくない影響を与えている。リヤサスを柔らかめにセットして、急激に後輪に荷重が加わる、あるいはコーナリングに際して急激で大きな荷重移動を伴うようなハンドリングの特性では、高速域でのコーナリングや素早いレーンチェンジ(危険回避等)での、定員乗車や荷室に重い荷物を積載して後輪荷重が酷く大きくなった状況での安定性や挙動の収束性が低下しやすい。時としては危なっかしくなりやすいわけだ。
新型エルグランドはアンダーステア傾向が強めのサスチューニングを施すことにより、リヤサス/後輪への負荷の急激な増大を抑えて、乗り心地と操安性の両立を図っているのだ。もう少し分かりやすく言えば、前輪の効きを落としている。
しかし、多くのドライバーは、新型車を運転しても、以前にも増して軽快なハンドリングと感じるだろう。その秘密はステアフィールやブレーキペダルフィールにある。どちらも、普段使うような領域で、軽く効く。ステアリングは中立から拳一つ分くらいのアクションでの反応がよく、大きな横Gを受けていない状態(余裕のあるコーナリング)では、操舵に素直に向きを変えていく。しかし、横Gが大きくなるほどに、操舵に対する反応は落ちていく。限界に近づくほどに反応が鈍くなるのは、操安面では重要なセオリーのひとつだが、そのギャップが大きいことや妙に軽く感じる操舵感覚が違和感を生み出しているのだ。
ブレーキについては、そこそこの領域。例えば、普段の運転できつめにブレーキングした時に相当する0.3Gくらいの減速までは、車重を感じさせないしっかりとした制動性能を発揮する。この時点では、車重が重く大きいクルマのわりには、非常によく効くブレーキなのである。ところが、さらに強い減速や降坂での減速になると予想外にあまいのである。車重を考えるならば、強い減速や降坂ブレーキで厳しいのは当然だが、ふつうに運転している時の減速感が良いため、その延長で厳しい状況での減速性能を期待してしまう。だから「予想外」であり、このギャップも違和感として残る。