ボディやキャビンの設計だけでなく、走りにおいても気軽で経済的なタウンカーと汎用性が求められるファミリー&レジャーワゴンの両立がモビリオの特徴といえる。
要するに、普段の日はお母さんと子供で買い物や近所に遊びに出かけるのにも使いやすいし、休日には家族一緒に200~300kmくらいのドライブに使ってもいい、というわけである。
搭載エンジンはフィットと同じく、i-DSIを採用した1.5l。排気量が大きくなったこともあるが、フィットよりも力強さを感じさせるもの。フィットのほうが軽快、活発という言い方もできるのだが、車体サイズや乗車人数面で重量がかさみやすいモビリオには粘り強い力のほうが重要であり、動力性能の特性はそのとおりとなっている。
注目はフットワークの設定。ハードウェアではフィットをベースとしているが、乗り心地はフィットよりもソフトである。重心の高いクルマではボディの動きやコーナリングの安定を高めるために、硬めのサスチューンを採用することが多いが、フィットとモビリオの乗り心地を比べると、逆の結果となる。
コーナリングでも、腰高なクルマにありがちな不安感はない。高い重心高のクルマにロールを締め込んで安定性の向上を図るサスチューンを施した場合、大抵は左右輪の荷重の差が大きくなり、それが独特な不安感、あるいは腰高なコーナリング感覚に結びつくことが多い。しかし、モビリオのコーナリングに高重心車の印象はない。適度な沈み込みとしなやかなロール感覚による腰の据わったコーナリングを示す。
ただ、サスチューンのまとめ所は、街乗り6、高速域4といった感じである。あくまでも街乗りで軽快さや乗り心地を損なわない範囲で、高速走行での安定性も高めたようだ。モビリオが対象とするユーザーの使用条件からすれば現実的なバランス感覚である。ただ、遵法ならば100km/h以上を出すことはないとはいうものの、高速での危険回避時のマージンを考えると、もう少し高速寄りのセッティングでもいいようにも思える。
それでもコンパクトで十分に大人6名が乗れる他車、アトレー7やエブリィ・ランディ、タウンボックスワイドと比較すれば、高速走行ではパワーも操安性も余裕を感じさせるもので、モビリオのアドバンテージと適応用途の自由度の拡大で重要な要素となっているのだ。
なお、月刊自家用車の3月号ではライバルを交えながらの詳細比較試乗が掲載される予定であり、現在その執筆準備中。さらに詳しくモビリオの実力を知りたいと考えているならば、同誌を一読して頂けると幸いである。