スキッドプレートを擬したフロントバンパー下部から下周りを覗き込むと、鈍い銀色の金属パーツが目に入ってくる。ロワアームをアルミ鍛造としているのだ。それは、このクルマ、すなわちエクストレイルに対するニッサンの並々ならぬ力の入れようを示す象徴ともいえた。
今回はちょっと気取った文章で初めたが、肩が凝るのでフツーにする。ニッサンから登場した新型SUV、エクストレイルにはふたつの特徴がある。ひとつは冒頭で述べた凝ったシャシーに象徴される走り。もうひとつはアウトトアスポーツ&レジャーで使いやすい工夫である。今回の記事は、デリバリーが開始されたターボモデルのGTをメインとするので、「走り」は後で述べるとして、まずは自慢の使い勝手の工夫だ。最も特徴的で、実際に便利と感じさせるのはラゲッジルーム(荷室)の床面ボード。何と丸洗い可能なのだ。
例えば、泥で汚れたマウンテンバイクや雪にまみれたスキーブーツなどもそのまま積んで床面ボードが汚れても、外してホースでジャバジャバと水をかけて洗えてしまう。使う人の現実的な視点で考えた工夫が施されている。
肝心の走りでは、しなやかなフットワークが印象的である。乗用車型の基本設計とこだわりの4輪独立懸架サスは、深いサスストロークを的確に制御。山岳ワインディングロードでも、高速走行でも穏やかで素直な操縦性を示す。乗り心地も腰があり、不安定な車両挙動を抑えたもの。こういったアシのよさが林道などのラフロードへ持ち込んでも維持されるのも大きな長所。アシの良さではSUVのベストといっても過言ではない。ここに280psを発生する2000ccターボエンジンを搭載したのがGTである。
外観は自然吸気仕様とほとんど変わらない。ラフロード走破性を低下させるローダウンサスや邪魔なエアロパーツは装着されない。自然吸気のこれまでの車種のコンセプトや使い勝手をそのままに、高速や登坂路での余裕を持たせるためにエンジンのパワーアップを図っている。280psのターボを積めば、サスを硬めるのが普通だが、しなやかで懐の深い標準仕様と同じサスチューンを採用している。エンジンのほうも、高回転に力が溜まったマニアックな特性ではない。トルクの変化を穏やかに幅広い領域での力強さと扱いやすさを求めたもの。ターボの過給タイムラグ(過給圧の応答遅れ)を相殺するために、浅いアクセルの踏み込みで、すぐにキックダウン(自動シフトダウン)するATの設定に多少の忙しなさを感じるが、実用を背景とした様々な状況で280psの余裕を感じさせる特性となっている。「使える280ps」なのである。
装備もグレードアップされているとはいえ、自然吸気エンジンを搭載するXよりも62.5万円も高いのがタマにキズたが、性能面の余裕と実用性の両方を欲張りたいと考えているアウトドア派は一考の価値あるクルマである。