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レース業界は終わってしまうのか?(2)(2ページ目)

3回シリーズで「冬の時代」を迎えているモータースポーツ業界の現状と今後の展望をご紹介している。今回は「SUPER GT」「全日本ロードレース」などの国内レースに注目し、未来への展望をお届けする。

辻野 ヒロシ

執筆者:辻野 ヒロシ

モータースポーツガイド

SUPER GT:ファンを飽きさせない演出が必要

サーキットで様々なレースに関わっていて今年強く感じたことがある。それは「確実にGTファンは増えている」ということだ。GTドライバーの出演するトークショーにはファンがワンサカ集まるし、ドライバーに対する目線や声援がこれまで以上に温かいものだったり、羨望や尊敬の念に満ちたものになってきているような気がするのだ。

事実、サーキット外で行われるトークイベントなどにもGTファンが多数集まるし、サーキット内の一般には告知されない「走行会」などのイベントにもGTファンがやってきてゲストのGTドライバーにサインや写真撮影を求める姿が多く見られた。個人ブログなどを通じて、GTドライバーたちが情報を発信している効果もあるだろう。
人気ドライバー、脇阪寿一が中心になって盛り上がるトヨタのGTドライバートークショー。脇阪は積極的にテレビにも出演するなどモータースポーツやSUPER GTの地位向上に貢献している。
【写真提供:TOYOTA Motorsport】
ブログといえば、今やGTファンのブログが数多く立ち上がっていて、ファンがGTの面白さやレースの興奮を一生懸命伝えている。また、ファン同士の交流も盛んで、熱狂的な応援団も好きな選手や応援するメーカーの垣根を越えて集ったりして、GTを楽しんでいるようだ。これはとても良い傾向で、ファンの方にはドンドン楽しんでもらいたいものである。

こういったひとつの「文化」になりつつある状態を「SUPER GT」は大切にしていかなくてはいけない。ドライバーが出演するイベントがあればドンドンと公式サイトで告知していくべきであるし、「ファンミーティング」などドライバーたちと会える機会もたくさん作るべきである。

結局のところ、GTを支えているファンはドライバーに会いたいのだと思う。ドライバーもコメントや自分の見せ方がとてもうまくなり、レース前のトークショーなどはジョークを交えた舌戦が展開されるなど本当に面白い。タレント性あふれるドライバーも増えてきているし、レースではカッコ良く、イベントではお茶目なドライバーに会えることこそがファンの何よりの喜びなのではないだろうかと僕は感じている。

レースがエキサイティングになるのも良い、マシンがカッコイイのも良いが、最終的にファンの中で「スター」になれるのはドライバーなのではないだろうか。
大観衆に手を振りながら行進するSUPER GTのイメージガール達。「SUPER GTが無くなれば、日本のレース界は終わる」と言われるほど、SUPER GTは国内レースで唯一華やいだ存在だ。新しい世代のファンも獲得している。
【写真提供:SUPER GT.net】

SUPER GT:レース屋さんたちの意地もとても大切

ドライバーのステータスが上がってきたことは非常に良いことである。彼らは本来は主役であるべきなのに、業界内部では昔から随分と地位の低い存在だった。確かにドライバーもマシンが存在しないことにはドライバーではないわけだし、多くの人の力添えでドライバーとして輝けていることは事実である。良いマシンがあっての良いドライバーなのだ。そういう意味ではレースを見る側もマシンを作る「レース屋さん」たちの存在を忘れてはならない。
毎年登場する個性豊かなマシンもGTの魅力。写真は今年登場したカローラ・アクシオ。エンジンはミッドシップという怪物だ。自由な発想でマシンが作れる所もGTの良い所。
「SUPER GT」にこれだけ多くのマシンが並ぶということは、それだけ様々な人の情熱が存在するということだ。マシンを作る予算を捻出する人たちは相当な苦労を重ねているはずである。例えば、予算を出すのが自動車メーカーだったとしたら、レースに興味のない首脳陣や株主たちは会社の利益を考えて「レースなんてやめちまえ」と意見するかもしれない。レースが人々の生活に根付いていない日本では当然の意見とも言える。しかし、技術的な挑戦を理由にして、何とかレースマシン製作の予算を捻出し、自分たちのクルマを走らせることに心血を注いでいる人たちがいるからこそ、グリッドにマシンが並ぶのである。これは絶対に忘れてはならない。

今年はGT300クラスに新技術を搭載したAWD(全輪駆動)の「スバル・レガシィB4」が登場した。「スバル」はシリーズスポンサーにも名を連ね、レースと積極的な関わりを見せたのである。昨年限りでWRCを撤退し、主だったモータースポーツでの活動は行ってこなかった「スバル」だが、彼らは自分たちの進むべき道や姿勢を忘れてはいない。そういう人たちが居るだけでもレース界は捨てたものではないと思うし、その思いが実現できるのが「SUPER GT」の良さでもあるのだ。そういった情熱的なチャレンジの周知もさらに必要であろう。
東京モーターショーでも展示されていた「レガシィB4」のGTマシン。注目して欲しいのはキャンギャルか?GTに挑戦するマシンか?見せ方が違うような気もするが、これが世の中の現実でもある。
来年はホンダがNSXに代わるニューマシンをGT500に参戦させてくる。「SUPER GT」には来年また新しいストーリーが待っているのである。人々の情熱のカタマリを見る人にどう伝えていくか、どう訴えるか、どう楽しんでもらうか?それは何年か先を考えれば、レースに勝つことよりも大事なことなのではないかと思う。

来シーズンの「SUPER GT」は遠征費用の削減のため、九州のオートポリス戦が休止となり全8戦でレースが行われ、11月にはフォーミュラニッポンと合同で特別戦が開催される。

次のページではフォーミュラニッポンをピックアップします。

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