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ライダー達の涙 8耐は大人の甲子園(2ページ目)

今年も様々なドラマが見られたコカコーラ鈴鹿8耐。このドラマ見たさに今年も多くの観客が鈴鹿サーキットに詰め掛けた。ライダーが全力を尽くし勝利へ邁進する姿を追った。

辻野 ヒロシ

執筆者:辻野 ヒロシ

モータースポーツガイド

徳留和樹 転倒で左肩を脱臼するも気力で完走

徳留が仮面ライダーで走るのは今年で3年目。彼にとっては、ワンステップ上に行くために重要な8耐だったはずだ。
今年も仮面ライダーチームが子供達の夢を乗せて鈴鹿8耐に参戦しました。全日本ロードレースでもチームメイト同士である山口辰也と徳留和樹のコンビも3年目を迎え、息の合った2人がどんなパフォーマンスを見せてくれるかに注目が集まりました。しかし、仮面ライダー兜ホンダドリームRTの鈴鹿8耐は初日から歯車が狂い始めました。
徳留和樹は木曜日の特別スポーツ走行で激しく転倒し、なんと左肩を脱臼してしまいます。本来なら補欠ライダーの高橋江紀に交代してもおかしくない状況でしたが、「走ります!」という徳留選手の言葉に宮城監督は徳留の続投を決意し、徳留選手は満身創痍の状態で8耐に臨むことになりました。宮城監督は「若いライダーに転倒と怪我の苦しみは付き物です。ここで歯を食いしばらないと。」と語り、その思いに応えるかのように徳留選手は痛々しいテーピング姿で予選に挑みました。

力でねじ伏せるかのような豪快なライディングは徳留の持ち味。今年は怪我の影響で影を潜めたが、きっと来年は復活するはずだ。
昨年、サーキット中のファンを虜にしたスーパーアタックから一転、窮地に追い込まれた徳留選手は痛みをこらえながらマシンを走らせました。本来なら予選はアタック役だったかもしれません。しかし、今回ばかりは基準タイムをクリアすることだけに徹しました。万全の体調とは言えない状態であるにも関わらず、前夜祭に顔を出しキッチリとファンサービスをするあたりからも彼のプロライダーとしての根性が伺えました。しかし、猛暑の鈴鹿8耐はその傷ついた体ではあまりにキツイ戦いでした。決勝レースの結果は6位完走。この状況下では実に立派な成績です。恒例の完走表彰式に仮面ライダー兜ホンダドリームRTの面々がやってきました。僕がマイクを向けるなり、うつむき加減の徳留選手の瞳から大粒の涙がこぼれ落ちました。このチームで8耐を戦って3年目、今年の8耐にかけていたでしょう。その強い思いは自分自身の転倒で悔しい週末に豹変してしまいました。「僕の転倒のせいで。。。」自分を責め、多くのファンが見守る中で泣き続ける徳留選手。周りがどんな言葉をかけようと彼の中では整理が付きません。きっと来年の8耐でこれまで以上のパフォーマンスが発揮できた時、あれは重要な通過点だったと思えるときが来るのでしょう。彼の心のチェッカーフラッグは来年に持ち越しです。

苦しみ抜いたヤマハ勢 これも8耐

YSP&PRESTO RACINGのエースとして活躍した中冨伸一は今年スーパーバイク世界選手権に参戦。凱旋レースとなった鈴鹿8耐であったが。。。
今年の鈴鹿8耐はヤマハにとってはあまりに苦しい戦いとなってしまいました。ヤマハはMOTO GPともスーパーバイク世界選手権(SBK)ともスケジュールが被らない今年の8耐に「YAMAHA BLUE RACING」を結成し、MOTO GPライダーのコーリン・エドワーズとSBKライダーの芳賀紀行を起用し鈴鹿8耐に挑みました。96年の優勝コンビであるだけにサーキットの注目を独占している状態でしたが、昨年までのヤマハのエースチーム「YSP&PRESTO RACING」の中須賀克行/中冨伸一組もこの鈴鹿8耐にかける思いは並々ならぬものがあったはずです。特に昨年まで同チームでエースライダーとして走り、国内のヤマハロードレース活動の顔でもあった中冨選手にとって、8耐は何とかSBKの不振から脱却するためにも好成績を残したいレースだったはずです。しかし、中冨選手にまたも不運が襲います。中冨選手は木曜日の走行中に激しくハイサイドで転倒し、首に怪我を負ってしまいます。幸い骨折などはありませんでしたがベストコンディションとはいえない状況に陥りました。何とか中須賀選手の頑張りで土曜日の最終予選には臨めたものの、猛暑となった決勝では苦しい戦いとなってしまいます。中冨選手は決勝でも走行中に再度負傷し、その治療に時間を要したためライダー交代が行えず、中須賀選手が一人で走ることになりました。中須賀選手がいくら若いといってもこの暑さでは限界があります。それに連続走行時間の制限もあり、チームは勝負権を完全に失いました。中冨選手は治療後に再びマシンにまたがりコースへ出ましたが、傷を負った体ではラップタイムをあげられずピットに帰ってきました。中冨選手はチームが用意したタオルで顔を隠し、抱えられるようにしてピット裏の控え室へと引き上げていきました。実力を評価され世界へ飛び立っていった中冨選手にとって、こんなに悔しい8耐は今までなかったでしょう。8耐の悔しさを胸に翌週のスーパーバイク世界選手権に旅立たなくてはならないこのツラさ。世界を股にかけて戦うアスリートの宿命ではありますが、今年の8耐は中冨選手が逆境に強い、真のワールドクラスのライダーへと成長するターニングポイントになるのかもしれません。
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