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ライダー達の涙 8耐は大人の甲子園(3ページ目)

今年も様々なドラマが見られたコカコーラ鈴鹿8耐。このドラマ見たさに今年も多くの観客が鈴鹿サーキットに詰め掛けた。ライダーが全力を尽くし勝利へ邁進する姿を追った。

辻野 ヒロシ

執筆者:辻野 ヒロシ

モータースポーツガイド

世界耐久チャンピオン、北川圭一 刀を置く決意の8耐

8耐ウィークの金曜日に現役引退を発表した北川圭一。2年連続の世界耐久チャンピオン獲得をSUZUKI CASTROL TEAMのドミニク監督と誓った。
FIM世界耐久選手権のシリーズ戦として開催されている「コカコーラ鈴鹿8耐」。8耐優勝を選手人生のゴールとし、38歳にして世界へ旅立ったライダーが居ました。18歳でロードレースにデビューし、全日本ロードレースと鈴鹿8耐でカワサキ、スズキのワークスライダーとして活躍した北川圭一選手です。北川選手は昨年、レース人生の集大成としてフランスのSUZUKI Castrol TeamとFIM世界耐久選手権を戦い、圧倒的な強さで見事日本人初の世界チャンピオンに輝きました。今年も同じチームで同選手権を戦い、ここまで4戦3勝という強さで第5戦の舞台、鈴鹿に帰ってきた北川圭一選手。「今年は優勝を狙える最後のチャンス」ということは本人はもちろん周囲の関係者も認識していました。その鈴鹿8耐で記者会見を開いた北川選手の口から出てきた言葉は「今シーズン限りでライダーを引退することにしました。日本で走るのは鈴鹿8耐が最後です。」という引退の発表。

毎年、ホンダのワークスライダーが注目を集める中で、北川選手は打倒ワークスホンダの代表的な存在でした。北川選手は2003年の8耐で優勝まであと1歩のところでマシントラブルを抱え、悲願の優勝を逃しました。「何としてでも鈴鹿8耐で勝ちたい。」8耐優勝はここ数年の北川選手から最も多く発せられたキーワードであると思います。

普段は優しい表情を見せる北川選手。しかし、サーキットで戦う時の表情は別人にさえ思えるほどに戦闘モードだ。
北川選手が挑んだ決意の鈴鹿8耐決勝は実に苦しい展開でした。スタートライダーのフィリップ選手が序盤で転倒し、マシンの修復に時間を要します。耐久レース専門で戦う老舗チームらしい素早い修復で北川選手に交代してピットアウト。しかし、北川選手はしばらくしてピットに戻ってきました。なんと転倒していたのです。さらにはフィリップ選手が再度転倒し、上位入賞は難しくなりましたが、少ない可能性を信じて少しでもポイントを得るために北川選手とチームは走り続けました。夕刻の時間、最後の走行担当時間を終えピットに帰ってきた北川選手にはグランドスタンドから大きな拍手が送られ、相当疲れていただろうに北川選手は時間が許す限りスタンドに向かって手を振り続けました。

「あー、終わった。」
ピットのチェアに座り、ヘルメットを脱いだ北川選手が発した第一声です。
「終わった」という言葉にはどんな意味があったのでしょうか?僕はこの北川選手の言葉を生で聞くことができた数少ない人間です。活字にすればただの一言ですが、自分の耳で聞いたこの一言は実に印象深いものでした。8耐を戦うツラさ、悔しさ、自分のパートを走り終えた安堵感、達成感。いくつもの思いが詰まった一言でした。この一言に北川選手の思いの大きさ、そして鈴鹿8耐というレースの大きさに改めて気づかされました。

鈴鹿8耐とは何か

疲労がピークに達した状態でライダー達が迎える夜間走行。毎年やってくる辛く苦しい時間だ。なぜにライダー達はこの瞬間を毎年迎えようとするのか?
きっと僕のような若造が語るべきでないのかもしれません。鈴鹿8耐を語ることは一生不可能かもしれません。また今年も鈴鹿8耐の大きさを肌で感じました。
鈴鹿8耐とは一体何なのか?きっと、答えはいつまで経っても出すことができないような気がします。ライダー達にとってはどうでしょうか?夢と憧れから始まり、挑戦し、もがき、苦しみ、上がり、下がり、毎年何かを探していく。。その答えが探し出せるまできっとライダーもアクセルを開け続けるのでしょう。簡単に見つけ出せないから、彼らはいくつになっても涙を流し続けるのでしょう。僕自身も立場は違えど、答えを見出せる日が来るまで、鈴鹿8耐に足を運びたいと思います。
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