子育ての幸せを感じてもらうために

こうしたレポートをみても、「子育て」というものが決して楽チンではないことが分かりますが、かといって「重圧」だったり、「女性側の人生の時間を奪い取られる」ということではありません。

子育ては、日本以外の国では「子どもを産む理由はなんですか?」のとの問いに「それは人生の楽しみだから」という回答がダントツ1位です。日本と韓国は男女格差も激しいことで共通項が多いですが、子どもを産む理由には「社会のために」と答えていることも共通です。先輩たちが、自分の人生のためよりも、社会的な役割という認識である以上、子育ては義務感が強くなり、個人としての楽しみを後輩たちが想像できないのではないでしょうか。

子育ては、未来育て。総じて幸福なことであり、リラックスしていればいるほど、楽しめるボリュームが増えるんですよ。このことは「ゆるむ育児のススメ」などの記事でも繰り返し伝えてきたことです。ところが、今の日本の社会は、国際的にみればまだ育児する女性に優しい環境とはいいがたいのが現実です。

いわゆる「企業戦士」に支えられた高度成長期には「男性は仕事にまい進する事が家族のため」という風潮が強く、父親不在の家庭も少なくありませんでした。それでも、携帯電話もなく、ネット通販もコンビニもない時代。母親が他の女性や地域社会の中で相談しあったり、協力し合ったりしながら子育てをするという土壌は、まだ残っていたと思います。

日本が工業化する以前の、ほとんどが農業従事者だった時代などは、地域の中で子育てをしていましたし、上の世代も同じ世代も縦と横の連携があってこそ、育児は孤独な作業ではなく、支えあいながら未来を、未来の人を育てる“人としての仕事”でした。助けてくれる人だらけだったのです。ところが、高度成長期の考え方そのままに、ますます核家族化が進み、地域社会の親密度だけが薄れてきてしまった今。

この調査で比較された20年前といえば、高度経済成長期が終わり、いわばバブル期で男女雇用機会均等法が施行された年です。まだまだ短大卒のほうが就職率が高かった時代ですし、当時は25歳女性の25%が出産経験があった時代なので、孤立することなく育児を楽しめ、また就労していなくても同じ育児中心の生活者に恵まれた環境だったのかもしれません。今は、企業の産休制度も安定し、復職していく母と退職して復職予定のない母では、乳幼児育児中も精神的には大きな差が生じるという現状です。母親となると、妊娠が判明した働く女性の60%から70%が退職せざるをえない時代です。その後の育児も、働いていようといまいと母親だけに育児の負担がのしかかるという現状。

兵庫レポートの原田教授も「このように母親だけに負担を強いる子育て環境は、歴史上かつてないほどだ」という見解を述べています。これでは次世代が少子傾向になるのも、無理もありません。

お手伝いではなく、タッグを組んで

よく「昔の母親はたくさんの子を育てていたからできるはず」と言って現代女性の甘えを指摘する声もありますが、時代環境を考慮せずに母親だけに全責任を押し付けるのはまちがいです。20年前と比較して大きな違いのひとつに、祖母世代の保育への積極性の違いもあると思いますがいかがでしょうか。当時の育児の助っ人だったおばあちゃんたち世代と、今の祖母世代を比べると、老後の生活観がまったく違うのではないでしょうか。

高度経済成長期に20代から30代で母になった女性たちが、日本初の専業主婦経験者おばあちゃんになっているのが現在。企業戦士だった夫を支えて専業で主婦をした世代ほど、老後は自分の世界を作ることも熱心で、お稽古やお仕事に忙しいということもあり「孫の世話ばかりなんて、まっぴらよ」という声もあります。または、企業戦士の専業主婦業を卒業した後、今度は孫育てに過剰になる場合も。そんな風潮も、現代の母に孫育児支援放棄か過干渉かで厳しいのが実情でしょう。ほどよい距離感は各世代ごとに創造するほかないのですが。

地域社会における「助け合い」の復興も当然待ち望まれますが、その前に、まずは父親が積極的に子育てに参加してくれることで、母親の孤立感をなくし、今の子ども達にできるだけ幸せな環境を与えてあげられるはずです。そう言うと「子育て?してますよ。我家は父親がお風呂担当です」という企業戦士の声も聞こえてきそうです。もちろんそれだけでも大切です。しかし、父となった男性たちも、ワーキングファーザーとして、これからの子育ては「参加」ではなく「お手伝い」程度でもなく、母親とタッグを組んでしっかり「チーム」を組んで役割分担はイーブンに力を合せていくことが大切ですよね。

孤独な子どもにしない

こうした意見を、当の母親が発言してしまうと「今の女性は甘えている」「父親だって仕事が忙しい」と反発されることもままあるようです。そこでグッと我慢してできるだけ自分でやってしまおうとすれば、母親の精神的な負担がより重くなります。

私が開催しているバースセンス研究所には、夫と一緒に参加する出産・育児のクラスがありますが、こうした場で講師=第三者の話を通して母親の育児の大変さを聞くと、父親も「なるほど……。それは本当に大変だ」と理解するケースが多いのです。女性側としては、こうした手段で男性の意識を変えていくのも大切。決して自分が楽をしたいからではなく、それが子どものためでもあるのです。「孤独な子育て」では「孤独な子ども」が育ってしまいます。

夫婦がお互いを思いあって、協力し合っていくことが家庭の基本。妻だけが男性同様に会社で働き、帰宅後は専業主婦のように家事育児で働いていたら、妻は過労死します。「それならそこまで働くな」という声も出てきそうですが、妻が働いていないとしても、男性が育児に関わらないのは世界から見ても変な価値観で、道理が合いません。働いていようといまいと、父となった大人の男性が家事も育児もできないのは日本人だけです。今後も男性だけが「仕事が忙しいから育児できない」を理由に家庭不在となって子どもに働く意味と人生の幸福を伝えそびれば、ますます日本のニートは増える一方でしょう。

父親が子育てをする日常を確保できるように、今、政府と企業が連携して働きやすくて育児ができて幸福を感じられる環境を整備しないと、誰もハッピーではありません。いずれ働く日を迎える子どもにとっても「母親の愛情と父親の愛情」の両方をたっぷり注がれた「幸せな子ども時代」を贈るのは、
大切な人生の仕事。いずれは幸せな大人の社会となって表面化してくるでしょう。働く夫婦が現代社会ならではのさまざまなストレスや問題を超えていくためには、その子どもがどんな大人になるかを創造することが鍵となるでしょう。

寂しい母と過ごした寂しい子ども時代にならないように、今、カップルで寂しさマネジメントのために、見通しをたてましょう!「どうしたいか」を明確にし「何を支援してほしいか」を明確にすると、見通しが立ちます!



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