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適正な分娩料は60万円! 国が調査まとめる(2ページ目)

分娩料を厚労省が初めて全国調査したところ、平均額は42万3,957円でした。この価格は実は低すぎ、かかっている経費を考えると本当は60万円くらい必要だということです。

河合 蘭

執筆者:河合 蘭

妊娠・出産ガイド

自由診療とはいえ大変な差……
出産施設によって最高60万円の開き

一番高額だった施設は東京都にあり、81万円でした。逆に一番安かった施設は京都にあり、21万8,000円でした。その開きは60万円近くあります。

高いお産はそんなに素晴らしいのでしょうか?また、安いお産はよくないのでしょうか?一体、分娩料とは何を表した金額なのでしょうか?

分娩料を左右していたのは住民の年間所得、そして公立病院の分娩料

調査は、分娩料と相関関係がある条件も調べました。すると、分娩料は医師数にも、大きい施設かどうか(ベッド数、分娩件数)にも関係がなく、次の2点と関連性があることが見つかりました。

1.住民の年間所得
2.都道府県内にある公立・公的病院の分娩料

地域の中では産院同士に競合関係があるので、他より目立って高額な金額にすることはできず、地域に安い所があればある程度そこに合わせなければなりません。一番安い所とは、たいてい公立・公的病院です。

今回の調査でも、経営主体別に見ると、都道府県立・市町村立病院は安い傾向が見られました。5~6割が分娩料を出産育児一時金(調査時点で38万円)以下に設定していました。国立病院、大学病院、日赤など他はどこも1~2割であったのに対して大きな差です。

公立・公的病院は、議会が「安価な分娩を住民に提供すべき」とすれば料金の値上げはできません。また赤字が出ても税金で補填されてしまうので、値上げが起きにくい構造になっています。

「お買い得なお産」は本当にいいもの?

分娩料が安い公立病院は、産む側にとっては、「お買い得」のお産で、母親や子どもを大切にした行政のように思われます。

しかし、最低限必要な経費がかけられないほど安いとしたらどうでしょう。お産が、経費が出ない報酬しか入らない事業になっているとしたら、産む所が減ってもしかたがありません。

職員に十分な報酬を払うこともできないので、医師を多数つなぎとめておくこともできなくなります。医師数が減っていけば残った医師は度を超した激務になります……安いし、周囲の民間施設はお産からどんどん撤退していくので妊婦さんがどんどん集まってくるのです……こうして産婦人科医を失った公立病院はたくさんあるのではないでしょうか。

料金を支払うということは、サービスの提供者が安定して事業を続けられるように、ユーザーが支える意味もあります。そうしないと、その事業がなくなってしまいます。分娩料が、もし、住民の年間所得を考慮してもなお安いなら、それは本当に産む人に優しいのでしょうか?

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