記者の中からも「決めつけだった」という声が

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NICUのベッドは寝台というよりも生命維持の装置。自力呼吸ができず、機械で息をしている赤ちゃんもたくさんいます。
【神奈川県立こども医療センターで】 
マスコミ関係者の中にも、表現を見直したいという気運が現れています。何名かの声をご紹介しましょう。

ある新聞記者は「受け入れ不能」という言葉がいいのではないか、と言います。「マスコミは、問題が起きた時に『本当は受けられたのに断った病院もあっただろう』と疑念を持って「たらい回し」と言い出したのでしょう。でも、現場取材に行くと、病院はこんな苦労をしてきたのかと実態がわかって、今は認識を改めつつあるところだと思う。先日の厚生省事務次官殺人事件で当初『テロ』という言葉が使われたように、マスコミは、実態がよくわからないうちに決めつけをしてしまうことがある。それは自戒しなければならないのでは」

番組の中で話し合い「たらい回し」という言葉は使用しないことに

民放TVでニュース番組を担当するあるディレクターも、現場取材をしたスタッフから「『たらい回し』という言葉は実態に合わない」という意見が出て、この言葉を番組内で使わないようになったと言います。ただ、かわりのいい言葉が見つかったわけではなく「搬送を断った」と表現することが多く、字数を節約する必要があるテロップでは「搬送拒否」となることが多いそうです。

受け入れてもらえない患者のやりきれない気持ちは、医師もわかってほしい

一方、しっかりと患者側に立った視点が大事だ、と考える報道関係者もいます。ある新聞記者はこう言います。「『たらい回し』は患者の実感そのものを表した言葉。それを『違う』と強調されると『医療者は断られた人の気持ちを理解していないのではないか』と世間から見られるだろう。『受け入れ不能』にすべきだ、という意見もあるようだが、それは個々の病院の状況を表しているだけで患者の困窮を表してはいない。『たらいまわし』という言葉を否定するには、さらなる検証をおこなうことも必要。ほとんどの医師は最大の努力をしているのだろうが、そうではない病院もあるかもしれない」

お互いの立場をわかり合いたい

「たらい回し」「搬送拒否」という言葉をめぐる報道関係者の思いはさまざま。でも、ひとつの共通項があるように思われてきます。それは、医療者、マスコミ、患者の間で「相手の事情が見えない」というコミュニケーション不足が起きているということです。

NHKで報道番組に携わるあるディレクターは「医療者と私たちが話し合える場を持ちたい。私たちも、医療との間に溝のようなものがあるように感じている。まずはそれを解決したい」と言いました。

はじめのコメントをくれた記者からは、こんな声も聞かれました。「こんなに困っていたのなら、医療側からもっと早くマスコミに発信してほしかった、という気持ちはあります。医療を責める表現になってしまったのは、お互いに日頃のコミュニケーションが不足していた」

願いは同じはず


産科救急や新生児医療のベッドが不足している状態は放置しておいてよいはずはなく、少しでも早い解決を願う気持ちは誰もが同じはずです。

「たらい回し」「搬送拒否」それとも「受け入れ不能」?この議論にはそこには、立場の違う人同士が共通認識を持つことの難しさが表れています。

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