医療者から起きる反発の声

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NICU(新生児集中治療室)では刻々とベッド状況が変わります。このとき空いていたのは1床。それも、少し前、ひとりの赤ちゃんに別施設へ移ってもらい、やっと空けたベッドでした。
【神奈川県立こども医療センターで】
妊婦さんの搬送受け入れがうまくいっていないことが問題になっていますが、さて、報道で繰り返されている「たらい回し」「搬送拒否」という言葉は適切でしょうか?実は、医療関係者からは、この言葉に対する強い反発の声が聞かれます。

病院バッシング?

日本赤十字社医療センター産科部長の杉本充弘医師は「正しくは『受け入れ不能』あるいは『受け入れ困難』でしょう」と言います。「たらい回し、拒否といった否定的な言葉が出てくるのは、どこかに病院バッシングの気持ちがあるからではないでしょうか?」

最近出産したあるお母さんは、「たらい回しという言葉を聞くと病院が何の努力もしていないように感じる」と言いました。確かに「たらい回し」「搬送拒否」という言葉には「本当は受け入れられるのに、面倒だから受け入れない」という職務怠慢・職務不履行のニュアンスが含まれます。そこが、医療者たちを「違う!本当に余裕がないんだ」と叫びたい気持ちにさせるのです。

受け入れられない場合は他の病院を紹介している

医療者たちが「自分たちがしていることは搬送の拒否ではない」と主張する理由は、ひとつには本当は「受け入れたい」と思っているということです。また、総合周産期母子医療センターは、受けられない人を、その場で投げ出してしまうわけではありません。担当地区内の発生については、他の病院をあっせん(紹介)するのがふつうです。

自分の病院ではなかなか受けられないが、ブロック内では9割を収容

日赤医療センターの場合、同病院に通院していた妊婦さんの緊急事態であれば、これは全員受け入れます。センター病院にはハイリスク妊娠が一帯から集まりますからこれだけでかなりのベッドが埋まりますが、医療センターはブロックの要になっている総合周産期母子医療センター。ですから担当地区内の緊急搬送についても責任を果たします。ブロックの中で診療所などから搬送が発生した場合は、自分の所あるいはブロック内のほかの病院(このブロックにはほかに国立東京医療センター、成育医療センターというふたつのセンター病院があります)で収容できるようにコーディネートをするのです。こうして、西南ブロックの中では9割が行き先を確保できている状況です。

重症度に応じた振り分けをしている

病院それぞれに「どれくらい小さな赤ちゃんを診られるか」「母体の治療にはどこまで対応できるか」に特徴がありますから、それらも考慮しながら、総合周産期母子医療センターは搬送先を決めています。この振り分けは、限りある高度医療のベッドを最大限有効に使うくふうでもあります。

「本当にベッドがない」という深刻な現実

残念ながら、やりくりをしても今の状況では限界はあります。日赤医療センターも、他のブロックや他県から来る搬送依頼は半数程度しか受け入れられていません。ただ、担当地区内の受け入れ責任をギリギリで果たせるか、果たせないかの瀬戸際にある病院がそれ以上のことを求められても、それは現実的ではありません。断られた人たちはみんな「たらい回しにされた」と感じているかもしれませんが、本当に受け皿が足りなくなってしまったのです。

少し良くなった赤ちゃんはNICU(新生児集中治療室)をすぐ出る・・・それでも足りない・・・

神奈川県立こども医療センターも同様でした。川滝元良・豊島勝昭両医師によると、ここも、ほとんど毎日が満床で、受け入れるのは他病院では治療出来ない赤ちゃんだけ。他の赤ちゃんはその子の重症度に合った病院を探してあっせんします。

それでも、どうしても県内にベッドがなく、県外に赤ちゃんを送らざるを得ない日もあるといいます。少しでも空きを作ろうと早期退院、転院につとめても今の状況ではそういう日が出てしまうのです。NICUを必要とする患者数と医療の供給が明らかにアンバランスだからです。