毎年14~15名のお母さんが脳出血で亡くなっているかもしれない
もし厚労省調査「乳幼児死亡と妊産婦死亡の分析と提言に関する研究」と同じ率で妊産婦死亡が隠れており、日本産婦人科学会の調査と同じ率で脳出血を発症する方・それにより亡くなる方がいるとしましょう。
これを計算すると、年間36名前後の妊婦さんが脳出血を発症し、うち14~15名が亡くなっていることになります。
妊産婦死亡の一位「脳出血」
以上にご紹介したデータを用いて中井医師が換算したところ、妊産婦死亡理由の推定順位は次のようになりました。死因として、脳出血は圧倒的な一位でした。
1位 脳出血 30%
2位 産科出血 16%
3位 肺塞栓 16%
4位 心血管系疾患 16%
5位 悪性腫瘍 14%
6位 感染症 2%
素早い対応がとれれば救命率は上がる
私たちがこれからできることは何でしょうか?脳出血は重い病気で、出血の部位など条件によっては救命が困難です。でも、素早く診断してすみやかに脳外科で手術を受けられれば、救命の可能性が上がることもある病気です。
救急救命センターと出産施設をつなぐネットワークがすぐに必要
中井医師はじめ多くの医師が今強く求めているのは、脳外科の空きを示すネットワークと周産期ネットワークが連結することです。実は現在の搬送システムでは、産婦人科医は総合(地域)周産期母子医療センター以外の空きベッドを探す手だてがありません。
「脳出血が起きてしまったら、搬送先は、必ずしも産科や新生児科の高度施設である必要はありません。何より大事なのは脳外科手術ができるところへ一刻も早く運ぶということです。それなのに、一般の救急と周産期で情報の一元化がされていないのはまったく納得できない」と中井医師は言います。
少しでも早い診断を
お産の現場にいる方たちも、時代が変わり死因が変化したことに対応せざるを得ないと思います。他科領域であり、極めて珍しいケースでもある脳出血ですが、今後は、産科でもより早い診断がつけられるよう、学ぶ機会があるといいのかもしれません。
高齢出産時代の問題?
高齢出産では、高血圧、心疾患、血液疾患など脳出血に関わる問題をかかええるリスクが高まります。先天的要素もあるのですが、もし若いうちに産むことができれば、その分、脳出血の可能性が下がるかもしれません。
脳出血が死因の第一位になったということは、現代の出産を象徴しています。産科学がぎりぎりまで進歩し、そして自らの限度を超えた姿ともいえます。
産む人や家族、他科の医師、そして行政も協力して、脳出血に対し意識を高めていくべき時でしょう。