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「産科受難時代」を生き残る病院とは?(3ページ目)

神奈川県鎌倉市には、今、出産できる施設がひとつしかありません。その病院の井上裕美先生と長谷川師長さんにお話しをうかがい、この産科医不足時代に生き残る病院の条件を探ってみました。

河合 蘭

執筆者:河合 蘭

妊娠・出産ガイド

どんな決断をしても、お産には必ずリスクがある


長谷川 お産には、絶対安全な道はどこにもないので、それを何とかわかって頂きたいんですね。たとえば逆子が臨月まで治らなかったら「外回転(お腹の上から赤ちゃんを回転させる)をして治す」「逆子の間自然出産をしてみる」「はじめから帝王切開にする」などいくつかの道がありますが、どの場合もリスクがあります。

井上 私たちは、産婦さんや赤ちゃんを常に助けられるわけではない。それが現実なのです。ご夫婦に選択肢について説明すると「先生の奥さんだったらどうしますか?」といつも聞かれますよ。でも、いずれも僅かとはいえ生命の危険を伴うことがよくわかっているからこそ、ご本人たちに選んで頂くしかないと思うのです。でも、そうやってしっかり話し合って決めても、やはり、良くない方向へいってしまうと逆上してしまう方もいます。

長谷川 でも、家族が怒り出している中で、ご本人が「私が選んだことだ」とハッキリ言って下さった方もいたんですね。私たちはあのお産のことは何度でも思い出しています。

井上 あの方のお産のことは、1シーンずつを克明覚えています。そう言って頂いたときは、誠意が通じたんだと思って、本当に嬉しかったですね。忘れられないですね。「私が選んだ」と言ってくれる、そういう方たちのおかげで、私はいまだにお産をやらせてもらっているのだと思います。

河合 今日はどうもありがとうございました。

イラスト 平井さくら

湘南鎌倉総合病院 
河合は、湘南鎌倉病院の井上裕美先生 & 現在あるいは過去にここに勤務していた助産師さんたちと、妊娠中の素朴で切実な疑問に答えるQ&A集を執筆中です。出版はまだ少し先になりますが、ご期待ください。

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