お話し下さった杏林大学医学部付属病院の福井トシ子さん。 |
(社)日本助産師会の調べによると、今や、産科単独で病棟が持てている病院はわずか8.6%しかありません。この傾向に早くから警鐘を鳴らしてきた助産師の福井トシ子さん(杏林大学付属病院看護部長)にお話をうかがってみましょう。
産科には、空きベッドを持つゆとりが必要なのに
河合 福井さんが混合病棟の問題が気になり始めたのは、いつ、どんなことがきっかけでしたか?
福井 10年くらい前から気になっていたのですが、5~6年前から切実になってきました。そのころ、全国から助産師が集まる講習会に関わったのですが、参加者からは「床ずれに困っている。どうすればいいか」というような質問が出るようになっていました。助産師は妊娠・出産の世話をしているはずなのに、現実の病院では、寝たきりのお年寄りの世話で四苦八苦していたんですね。
河合 産科は、他の科と較べても混合病棟になりやすい科なのでしょうか。
福井 産科は、陣痛が始まった人、早産しかけた人が突然入院して来るのが特徴で、そのゆとりを見た空きベッドが必要なのです。そうすると、産科でちょうどいいベッド稼働率は85%くらい。ところが、病院全体の一般的な考えに照らすと、それでは経営を圧迫すると思われがちです。
そこで、ベッドがあいていれば、他科の患者さんを入れてはどうかということになります。それをすると、とっぜんお産が重なったりする時に部屋が足りなくなるのですが。たとえば陣痛室で入院生活を送る人が出るなど、妊産婦さんにしわ寄せが行くことになります。