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危機?! 病院出産のクオリティー(3ページ目)

少産化の影響により、病院の産科では他科との混合病棟化が進んでいます。助産師の福井トシ子さん(杏林大学医学部付属病院看護部長)に病院の産科が抱える事情をうかがいました。

河合 蘭

執筆者:河合 蘭

妊娠・出産ガイド

スタッフもお産に専念できる


河合 杏林が産科を単独病棟にすることができたのは、なぜだったのですか。

福井 総合周産期母子医療センター となったことが一番大きかったと思います。分娩件数が減る中、これは病院としても大きな決断でした。

産科だけになって、やっと母子同室を始めることが出来ました。それまでは、「そんなことをして、感染や連れ去りといった事故の可能性を高めたら大変」という思いがあってなかなか踏み切れなかったのです。今は、お関係の人だけが入ってくる落ち着いた環境になったので、安心して出産直後から完全母子同室をしています。

スタッフも産科に専念できるので、どうしたらいいお産ができるか、考えられるようになります。母子同室も母乳ことなどできめこまやかなケアが必要ですが、今は「産後3日は徹底してお母さんにくっついてケアしよう」と言い合わせて、がんばっています。退院まもないお母さんと、お産について助産師が出産を振り返る「バース・レビュー」も全員に出来るようになりました。



◆混合病棟の取材を終えて

状況を教えて頂いた杏林大学付属病院では、産科のセンター施設になるという道を選ぶことで、専門部門を確立することができていました。最近の傾向としては、お産により高い質を求める女性たちのニーズにこたえ、以前より産科に力を入れる病院が出てきているのも事実です。

しかし少子化の中、流れに任せているだけの病院では、お産のためのスペースやマンパワーがどんどん縮んでしまいそうです。これでは「何度も生まないからこそ、ひとつずつのお産を大切にしたい」という女性の願いはかないません。

ある意味で、病院出産は今、本気でお産を抱えていくのか、それとも先細りの部門とするのか、どちらかの道へ分かれていく時期なのかもしれません。そして、あなたの町の病院がどちらの道を行くかは、そこで出産したい女性自身の声も鍵を握っていくと思われます。



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