●「エネルギー節約遺伝子」を発現したインディアンと同じ
こうした現象は、米国のピマ・インディアンの人たちが、成人病で悩んでいる状況を考えると理解し易いかもしれません。
ピマ・インディアンは長い間食物の乏しい砂漠地帯に暮らしたため、少しの栄養でも節約して身体に取り込む「エネルギー節約遺伝子」が発現していると考えられます。つまり長い間に、乏しい食物でも生活できるように特殊な代謝適応が身体に起こっているのです。米国政府から保護されて、高栄養食をとるようになってもこの遺伝子は変化せずにそのまま機能し、少しの栄養でも太りすぎや成人病を引き起こしやすくなり、子どもでもその数が激増しているのです。
お腹の中で低栄養状態にさらされた赤ちゃんは、少しの栄養でもやっていけるように代謝適応がおこります。そして生まれたあとも、その特殊な代謝適応が持続して、ピマ・インディアンのように肥満や成人病を起こしやすくなってしまうのです。
お腹にいる時期は、赤ちゃんが一生の代謝反応を決める大事な時期といえます。
イラスト・平井さくら
成人病は、先進国では死因のトップです。この「バーカー説」を十分研究し、低栄養にさらされる赤ちゃんを少なくすることができれば、これを予防することが可能になるかもしれません。そう考えると、妊娠中の無理な体重制限は、単にマタニティの問題ではなく、「国民全体の問題だ!」と言ってよいかもしれません。
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