妊娠中の体重制限の落とし穴について何度かとりあげてきましたが、今回は、産婦人科医の福岡秀興先生(東京大学・大学院医学系研究科・国際生物医科学助教授/写真)にご登場いただきます。

「バーカー説」という医学仮説によると、妊娠中の栄養不足は、赤ちゃんが将来成人病にかかる確率を高めるというお話しです。




●やせることの危険性に気づいて

私が、女性の「やせ」について気になり始めたのは、病院外来に、ダイエットをやりすぎて生理が停止した人が増えたのがきっかけでした。

若いにもかかわらず、重症の方では、ホルモン状態が閉経期に近いものになっており、骨量減少が進み、場合によると骨粗鬆症といってよい状態の方もいます。女性ホルモンが極端に減少しているために、記憶力が衰えて物忘れがひどいという方もいます。

やせ願望が強い女性たちは、増えています。日本の15-30歳の女性でみた場合、「やせ」は近い将来4分の1にまで増加するのではと予想されています。この人たちが妊娠して、産科外来でも「体重を増やしてはいけません」と強く言われ続けたら、どうなるでしょう。

●イギリス、アメリカで大規模な調査

妊娠中の低栄養にさらされた赤ちゃんは成人病を発症するリスクが高いという「成人病胎児期発症説=バーカー説」は、英国で、15,726名の出生体重と冠動脈疾患による死亡を調べた大がかりな調査で知られるようになりました。生まれた時小さかった人ほど、冠動脈疾患による死亡率が高かったのです。

また米国で、看護師12,1700名にたずねた調査でも同様で、2500g以下で産まれた人は標準で生まれた人の約1.3倍心臓血管疾患にかかりやすいという結果でした。

更に、乳幼児死亡率が高い地域は、冠動脈疾患による死亡率が高いという意外な報告もあるのです。成人病は「贅沢病」と考えられていますから、乳児死亡率の高いような貧しい地域は患者が少ないと思いがちですね。しかし事実は逆だったのです。これも、このような地域では母親が低栄養状態におかれることが理由かもしれません。

>>成人病のない世界>>