投資信託を批判する本が売れています。専門家たちの批評は正当なのか?投資信託批判を冷静に批評したいと思います。

投資信託をあげつらう論点は、だいたい次の5点の集約されます。

1.投資信託は損をする

投資信託で投資をすると損をすると書いている本があります。よく読んでみると、株価が下がる相場の悪い状況での体験です。投資の成果を比較するときに一般的な方法は、相対評価です。つまりその収益率がベンチマークと比較して勝ったのか負けたのかを論じなければ、公平な比較となりません。

しかも、5年以上の長期で見なければ、外部環境の影響を除外できません。その商品が悪かったと決め付けられません。ですから、絶対的な収益率でプラスだったマイナスだったという話は本人にとっては貴重な体験であっても、読者や世間に対して共有できる教訓にはなりません。

投資の目的をひと言でいってしまえば、物価上昇率をどれだけ上回るか?という相対的な闘いなのです。10%超のインフレの国で10%のリターンをあげても意味がありませんし、逆にデフレの環境でリターンが0%だったらそれは素晴らしい数字であるということは想像すればご理解いただけると思います。

比較する対象のベンチマークは、物価上昇率や株価指数のように、普遍的な数字でなければなりません。普遍的な数字とは、誰でも納得できる、誰でも入手できる、過去の数字も公開されている、大きな数字という意味です。

あまりに個人的な体験談や本当にそうだったのか確認しようのない手柄話も、あなたには役立たないかもしれません。ノイズかもしれません。全体的に悪い状況のなかで、私はこうして儲けたという話(たとえば仕手株を買い持ちしてとか)は簡単ですが、結果論なら誰でも書けます。それが、未来の予測だったらだれにも言わないで、一人でせっせと買えばもっとも儲かるはずなのに。

保険会社の元本確保型の貯蓄性保険と比較して、「投資信託で損した保険で得した」という言い方もされます。しかしリスク商品はリスク商品と比べなければ公平でありません。野球選手と格闘家を比べてもあまり意味がないのと一緒です。相場の悪い時期に数%の利回りが保証されている金融商品と投資信託などリスク商品とを比べれば、それは勝敗は明らかです。

でも、良いときもあれば悪いときもある長期の実績でみれば、株価の上昇を上回る金融商品はありません。元本確保型商品は相場に対して常に劣後しています。
劣後していない元本確保型商品があるとすれば、それは詐欺的商法やネズミ講のようなもので、それこそ近寄ってはいけません。

2.投資信託はベンチマークに負ける

投資の相対評価が分かる専門家たちの中には、次に投資信託が相対評価でも負けると主張する人が少なからずいます。たとえば、こんな書き方です。「投資信託の過半数はベンチマークに負けている。だから投資信託はダメだ」

しかし、私たちは投信業界の議論をするつもりはありません。私たちの資産運用をどうしたら良いかという具体的な課題の場です。

むしろ、投資信託のパフォーマンスをめぐる本質的な議論は、資産を増やしてくれる投資信託はどれなのか?優秀な投資信託はなぜ優秀なのか?良い投資信託をどこで見分けるのか?ということなのです。しかし、この国にそこを啓もうできる専門家が少ないことも現状です。

投資信託を正しく評価するには、作り手である業界だけでなく、使い手であるユーザー側の全体的なレベルアップが必要です。自分の視点だけから評価して、それが正しいと決め付けるほど、私たちは投資においてまだ成熟していません。

3.投資信託はコストがかかる

株式の売買手数料はどんどん安くなっています(2009年で0.1%とか)。それに比べて投資信託では一般的に3%前後の購入手数料がかかります。そこだけ注目すれば、確かに投資信託を使うコストは高い!となります。しかも、信託報酬というランニングコストもあるのですから。

しかし、これも公平な比較でないことに気付いてください。

自分でゼロからすべてを調査して選択して銘柄を個別に国内で買っていく株式売買のコストと、運用会社のプロがその準備を代行してくれて、しかも世界中の数10銘柄がワン・パッケージで簡単に買える投資信託のコストとを比べて高い安いを論じるのは、あまりに単純です。

日本株トレードの積もりで、もしあなたが世界の主要な株式市場の有望銘柄を発掘し、その財務諸表を日本語に訳し、海外の株式市場で個別に株式を買っていくとしたら、どれほどのコストと時間がかかることでしょうか?その手間を大勢の小さな投資家で割りカンにして負担すると、スケールメリットにより数%の費用になるというのは、悪いことではありません。

コストに関する本質的なアプローチは、そのコストがサービスや品質に見合っているのか?見合っている投資信託や証券会社はどこなのか?コストを払うに値する商品や会社をどうやって見つけるか?ということにあるのではないでしょうか。

投資信託を批判する専門家たちの避難港は、ノーロードファンドあるいはインデックスファンド、パッシブ運用というところです。「投資信託はおススメできないが、コストが安いという点で、ノーロードなら(あるいはインデックスなら、パッシブなら)まだ許せる」と、一様に結論付けます(まあ、これとても、アクティブ運用をまったく毛嫌いする学者的な発想なのですが・・・ここでは主題ではないので素通りします)。
 

4.そもそも分散なんてイラン!

「分散投資なって弱虫の戦法だ!」なんて、勇ましく投資に立ち向かうツワモノ投資家は、分散というだけで投資信託を批判します。自分の勘と度胸を信じて損失を怖れない人なら、それもまた自然な批判です。

大事なことは、読者の皆さんが、自分もそうしたたくましさを持っているのか?という自分の内面を知った上で、他人の意見を判断することです。私の経験では、分散を必要としない豪腕投資家は100人に一人もいないと思います。

投資先進国のアメリカでは、プロは素人にまず分散を奨めろと法律で規定しています。それほど、投資で分散することは重要なことをご認識ください。
 

5.もっとハイ・リターンを狙える投資法がある!

分散投資か集中投資かというパターンのほかに、現物買いかマネーゲームかという対極のパターンもあります。マネーゲームというのは、レバレッジをかける信用取引や株を借りて相場をはる空売り、そして株価の変化に賭けるオプション取引などです。それに対して、現物買いというのは、株式にせよ投資信託にせよ、資産として現物を自分のキャッシュで買って上がるまで待っているという単純な戦略です。

マネーゲームの場合には、賭けに負ければすべてを失う必要がありますし、信用取引をしていれば「追証」という借金取りまで付いてきますからリスクは大変なものがあります。現物の買い持ち戦略では、すべてを失うことはほとんどありません。ましてや、十分な分散をしていれば悪いときでも3割減る程度、100年に一度の危機なら半分になるかも・・・という具合です(それでも10年で2倍になる確率が3分の2くらいあるならやろう!と思う人だけが投資はするものでしょう)。

マネーゲームをする人の目には、投資信託は「子どものおもちゃ」のように映るかもしれません。それも自然な反応です。しかし、先ほどの分散を拒否する豪腕投資家と同様で、そんな向こう見ずな人は多くありません。ほとんどの人が、臆病な投資家であることを自覚して、威勢の良い意見に自分を見失わないようにしたいものです。

冷静な判断で、投資信託を賢く使ってほしいものです。

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