モネ、ルノアール、ゴッホetc... 印象派絵画のある美術館
画家が見たものを、気持ちのままに、思ったように、自然に描いた印象派の絵画は、日本で、そして世界でも常に大人気です。対象物を緻密に、正確に描き、そして場合によってはモチーフがドラマティックであるのが良い絵画だ、とされていた当時の常識と印象派の絵画は正反対のもの。19世紀末の誕生当初は、印象派について激しい議論が巻き起こりました。そして印象派は、現代に至るまで美術に大きな影響を残しています。
この印象派作品を収蔵するおすすめの美術館を紹介します。
<INDEX>
■国立西洋美術館(東京)
■【現在休館中】ブリヂストン美術館(東京)
■大原美術館(岡山)
■松岡美術館(東京)
■笠間日動美術館(茨城)
■地中美術館(香川)
■DIC川村記念美術館(千葉)
■ポーラ美術館(神奈川)
■アサヒビール大山崎山荘美術館(京都)
■東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館 (東京)
■横浜美術館(神奈川)
■ひろしま美術館(広島)
印象派のコレクションが充実している美術館
印象派の作品、きちんと多めにしっかり見たい!という方におすすめの美術館をご紹介します。■国立西洋美術館(東京)
~国内最大級の西洋美術館
クロード・モネ 《舟遊び》 ©国立西洋美術館
クロード・モネの『舟遊び』も、開館当初からある松方コレクションのひとつです。ちなみに、フランスのオルセー美術館やルーブル美術館、ポンピドゥー美術館でも松方コレクションの一部が収蔵されています。
モネ やルノワール、ゴーギャンなどなど、印象派の巨匠たちの作品を多く見ることができる美術館。常設展示だけ見ても満足できます。毎月第2、第4土曜日、そして11月3日は常設展示は無料で観覧できるので、ぜひ行ってみてください!
住所:東京都台東区上野公園7-7
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
開館時間:9:30~17:30、常設展示室は金・土曜 9:30~20:00
また、プレミアムフライデー時などはさらに開館時間を延長することがあります。
入館料:一般500円、大学生250円、高校生以下無料※企画展は異なる
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
公式サイト
※ 国立西洋美術館は東京の美術館でも紹介しています。
■【現在休館中】ブリヂストン美術館(東京)
~銀座からもほど近い、都会で楽しむ印象派
クロード・モネ《睡蓮》1903年
週に2回ペースで行われるギャラリートークでは、学芸員が初心者にもわかりやすく展示作品を解説。専門家が、芸術についてさまざまなテーマを深く掘り下げる土曜講座など、あらゆる方が芸術に親しめる土壌作りも活発に行われています。
ただいま、ブリヂストン美術館は建て替えのため長期休館中。新しく生まれ変わった美術館は2019年秋に再オープン予定です。いまから待ち遠しいですね!
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住所:東京都中央区京橋1-10-1
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10:00~20:00(日曜、祝日は18:00まで)
休館日:月曜(祝日の場合は翌日)、展示替期間、年末年始
公式サイト
※ ブリヂストン美術館は東京の美術館でも紹介しています。
■大原美術館(岡山)
~日本を代表する私立美術館
大原美術館館内 名品が並ぶ 写真提供:大原美術館
本館の展示室は、モネやルノワール、ゴーギャンなどの印象派からポスト印象派の作品ずらりと並び圧巻です。
エル・グレコの『受胎告知』や、レオン・フレデリックの『万有は死に帰す、されど神の愛は万有をして蘇らしめん』なども合わせて、この美術館でしか見られない作品群ばかり。西洋美術の移り変わりを感じ取ることができます。ぜひ、一度は訪れたい美術館です。
大原美術館外観 ギリシャ神殿風 写真提供:大原美術館
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住所:岡山県倉敷市中央1-1-15
TEL:086-422-0005
開館時間:9:00~17:00
入館料:一般1300円、大学生800円、高校生以下500円
休館日:月曜(祝日の場合は翌日、7月下旬から8月、10月~11月は開館)、年末
公式サイト
■松岡美術館(東京)
~印象派をはじめ、珠玉の名品が揃う
実業家、美術収集家の松岡清次郎氏のコレクションをもとに私邸跡地に設立された美術館。白金台の閑静な住宅地で、こぢんまりとしながらも、歴史、ジャンルを問わずさまざまな作品を収蔵しており、特に中国陶磁器のコレクションは圧巻です。また、印象派作品を数多く所蔵していることでも知られています。ピサロやモネ、ルノワールから新印象派のシニャック、そしてその後の20世紀の絵画まで幅広く作品を見ることができます。
閑静な住宅街にある松岡美術館 外観
住所:東京都港区白金台5-12-6
TEL:03-5449-0251
開館時間:10:00~17:00
入館料:一般800円、中高大学生500円
休館日:月曜(祝日の場合は翌日)、年末年始、展示替期間
公式サイト
■笠間日動美術館(茨城)
~歴史ある画廊が作った美術館
年に5~6回の企画展を開催する企画展示館
フランス館、企画館、日本館と、3館に分かれた展示は、それぞれの国を代表する作家の名品が集められています。なかでも、フランス館にはその名の通り、モネ、ドガ、ルノワールなどの印象派、ゴッホ、セザンヌ、などのポスト印象派の作品が充実。ゆったりとした時間を過ごせます。
また、この美術館独自のコレクション「パレット画(画家愛用のパレットに絵が描かれたもの)」は、画家との強い絆を生かしたこの美術館だからできるもの。ぜひ、合わせてご覧ください。
フィンセント・ファン・ゴッホ《サン=レミの道》1889-90年
住所:茨城県笠間市笠間978-4
TEL:0296-72-2160
開館時間:9:30~17:00
入館料:一般1000円、高大学生700円
休館日:月曜(祝日の場合は翌日、展示替期間)、年末年始
公式サイト
自然とともに、印象派絵画を堪能できる美術館
印象派の画家たちは、何よりも自然を愛し、積極的に外での写生にいそしみました。『睡蓮』の連作で知られるクロード・モネは、晩年は自宅に睡蓮が咲く庭園を作り、一日中睡蓮の絵を描き続けていたのだとか。そんな、印象派の画家たちに多大な影響を与えた自然を、作品とともに楽しめる美術館を紹介します。
■地中美術館(香川)
~直島でモネの『睡蓮』を堪能
アートの島として、現在人気急上昇中の直島でも、印象派を楽しめます。安藤忠雄設計の地中美術館では、クロード・モネの『睡蓮』が5点。その日、そのときによって趣きの変わる自然光の下で見る『睡蓮』は、見る人、見るときによって大きく印象が変わってきます。時間をかけて太陽の移ろいを感じながら鑑賞してください。
また、美術館の外には、モネの自宅庭園「ジヴェルニーの庭」に植えられていたとされる植物をベースに作られた庭園「地中の庭」もあります。花々、光のきらめきの美しさを、庭園でもお楽しみいただけます。
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住所:香川郡直島町3449-1
TEL:087-892-3755
開館時間:10:00~18:00(10月1日~2月末日までは~17:00)
入館料:一般2060円
休館日:月曜(祝日の場合は翌日)12月30日~1月2日
公式サイト
■DIC川村記念美術館(千葉)
~現代美術、広大な自然散策路も必見
フランク・ステラやマーク・ロスコなど、戦後アメリカ美術の上質なコレクションに定評のある川村記念美術館は、実はモネやボナールなどの印象派から、シャガールや藤田嗣治などエコール・ド・パリの作品まで近代絵画も充実しています。また、9万坪にもわたる広大な敷地には、印象派の画家たちが愛した「季節の移り変わり」を楽しめる自然散策路も。クロード・モネ 《睡蓮》 1907年
住所:千葉県佐倉市坂戸631
TEL:0120-498-130
開館時間:9:30~17:00
入館料:展覧会ごとに異なる
休館日:月曜(祝日の場合は翌日)、年末年始、展示替期間
公式サイト
■ポーラ美術館(神奈川)
~箱根の山々のなかで、印象派を堪能
オーギュスト・ルノワール《水浴する女》1891年
2002年に箱根に開館したポーラ美術館には、西洋絵画や、ガラス工芸、日本画、陶磁器など幅広いコレクション約9500点が集結。特に、モネやルノワール、ピサロなどの印象派からエコール・ド・パリを中心とする西洋絵画は全400点にものぼる充実したもの。
ガラス越しに箱根の四季を堪能できるエントランス
ガラス窓から差す、美しい光と、箱根の緑を堪能しながら作品を鑑賞できます。また、箱根の自然を満喫できる散策路もオープン。レストランやカフェは、企画展にちなんだ特別メニューも。優雅な休日を過ごせる美術館です。
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住所:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285
TEL:0460-84-2111
開館時間:9:00~17:00
入館料:一般1800円、高大学生1300円、小中学生700円
休館日:無休(展示替期間を除く)
公式サイト
■アサヒビール大山崎山荘美術館(京都)
~自然あふれる山崎の麓で『睡蓮』を見る
クロード・モネ 『睡蓮』 1914年~1917年 油彩 キャンバス 180×200cm アサヒビール大山崎山荘美術館蔵
モネの絵のような池のある庭園
住所:京都府乙訓郡大山崎町銭原5-3
TEL:075-957-3123(総合案内)
開館時間:10:00~17:00
入館料:一般900円、高大学生500円
休館日:月曜(祝日の場合は翌日)、年末年始、展示替期間
公式サイト
※ アサヒビール大山崎山荘美術館は関西の美術館でも紹介しています。
ポスト印象派(後期印象派)の作品を見るなら
モネやルノワールが登場した少し後、 ゴッホや、ゴーギャン、セザンヌなど、よりいっそう、独自の作風を追求する画家たちが現れました。彼らはポスト印象派(後期印象派)の画家と呼ばれています。この、ポスト印象派の作品を持つおすすめ美術館を紹介します。印象派の作品も合わせて収蔵している美術館が多いので、じっくり見比べてみるのも面白いですよ。
■東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館 (東京)
~ゴッホの名作「ひまわり」を新宿副都心で
新宿副都心のシンボルでもある損保ジャパン日本興亜本社ビル
淡く幻想的な色調で人気を馳せた東郷青児の作品を中心に、ゴッホの最高傑作の一つとされる《ひまわり》や、ゴーギャン《アリスカンの並木路、アルル》、セザンヌ《りんごとナプキン》の作品などを収蔵されています。眺望も素晴らしいので、ぜひご堪能を。
そして、現在2020年の完成を目指して損保ジャパン日本興亜本社ビルの敷地内に新美術館が建設中です。42階から地上へ名品たちが降りてきます。ご期待ください!
住所:東京都新宿区西新宿1-26-1 損保ジャパン日本興亜本社ビル42階
TEL:03-5777−8600(ハローダイヤル)
開館時間:10:00~18:00
入館料:展覧会ごとに異なる
休館日:月曜(祝日の場合は開館)、年末年始、展示替期間
公式サイト
■横浜美術館(神奈川)
~セザンヌ以降の近代絵画の流れがわかる
みなとみらい21地区のシンボル 丹下健三設計の美術館 撮影:笠木靖之
印象派の画家たちが多大に影響を受けた「写真」のコレクションも充実しているので、絵画と写真がお互いにどのように影響されているのか、などもチェックしながら鑑賞するのも楽しいですね。
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住所:神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1
TEL:045-221-0300
開館時間:10:00~18:00(企画展開催中の金曜は20:00まで、入館は閉館30分前まで)
入館料:展覧会ごとに異なる
休館日:木曜(祝日の場合は開館、翌日休館)、年末年始、展示替期間
公式サイト
※ 横浜美術館は写真美術館ベストでも紹介しています。
■ひろしま美術館(広島)
~ロマン派からエコール・ド・パリまでまるっと堪能
広島中央公園の一角、緑に囲まれた美術館は、ひろしま銀行創立100周年を記念して造られたもの。美術館本館は、印象派を中心に約90点の作品を常設展示。4つの展示室を巡れば、西洋美術150年の流れをしっかり堪能できる仕組みです。
とくに、ゴッホの《ドービニーの庭》をはじめ、セザンヌ、ゴーギャン、スーラ、ロートレックなどポスト印象派、新印象派の展示室は必見。建物中心部にあるドームからは優しい光が降り注ぎ、とにかく心地よい空間です。
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住所: 広島県広島市中区基町3-2
TEL:082-223-2530
開館時間:9:00~17:00
入館料:展覧会ごとに異なる
休館日:年末年始
公式サイト
ポスト印象派とは?後期印象派とはどう違うの?
このごろよく聞く「ポスト印象派」という言葉。かつては「後期印象派」と呼ばれていました。このポスト印象派、後期印象派は、印象派とはなにがどう違うのでしょうか。また、なぜ呼び方が変わったのでしょうか。このポスト印象派、そして後期印象派は、実はどちらも同じ意味。英語の「Post-Impressionism」を翻訳したものです。この「Post-」は「~の後の」という意味がある接頭語。「ポスト・モダン」や、「ポスト○○政権」というような表現で、日本でも活用されています。
つまり「Post-Impressionism」をきちんと訳すと「印象派の後(に出てきた絵画)」という意味。後期印象派という訳語だと「印象派の後半部分にいる画家」という感覚で捉えてしまう方が多くなってしまいます。
Impressionism ≠ Post-Impressionism なのに、それはちょっと困りもの。ということで、後期印象派のことをこのごろは「ポスト印象派」と呼ぶようになりました。
ポスト印象派という名称は登場してきたばかり。全国の美術館ではまだまだ「後期印象派」のキャプションを使用しているところも多いようです。現在は呼び方が混在していますが、絵画作品の素晴らしさが変わるということではないので、あまり気にせず美術館を楽しんで行きましょう。
ということで、印象派の美術館を紹介しました。非常に残念なのですが、ここに紹介できた美術館はほんのわずか。まだまだ日本は印象派の作品を所蔵する美術館がたくさんあります。皆さんも、お気に入りの作品、美術館をぜひ見つけてみてくださいね。