伊藤若冲 人気の秘密は、卓越した画力と引き出しの多さ

伊藤若冲をご存知ですか? 彼は18世紀初頭、京都の青物問屋に生まれた異色の画家。近年、その誰にも真似のできない画風が注目され、人気を読んでいます。
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伊藤若冲 雪中雄鶏図 細見美術館

若冲が異色と呼ばれているその理由、それは、その画風と人生が独特であったから。

羽の先まで緻密に描き込んだ鶏や、葉先の虫食いまで執拗に描きこんだ植物たちなど、見る人を圧倒させる画力を持つ若冲。その一方で、野菜を擬人化させた絵や、のんびりかわいらしい人形の絵など、ユーモラスな絵もたくさん描いています。

さらには、西洋画を彷彿とさせるようなモザイク風の絵や、版画、石像などさまざまな分野にもチャレンジ。加えて障壁画(しょうへきが、襖や壁など、日本建築の室内に描かれた絵のこと)や絵を熱心にお寺に寄進するなど、絵にまつわる「ひきだし」と「バイタリティ」の多さは驚くべきもの。

また、その人生も独特です。若冲は家業の青物問屋を継いでいたものの、小さい頃から絵が好きで好きでたまらず、40歳になってお店を弟に譲って絵の世界へ入りました。

あまりに絵が好きすぎて、家からほとんど出ずに、縁側に放し飼いにした鶏をスケッチし続けていたという逸話があるほど。つい最近まで「オタクの元祖は若冲では?」と言われていました(近年の研究で、地元商店街存亡の危機に立ち上がり、市民運動を率先して行っていたなど、実はけっこうアクティブな一面を持っていることも判明しています)。

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伊藤若冲 瓢箪牡丹図のうち瓢箪図 細見美術館蔵

現在の若冲ブームは、1970年、現在はMIHO MUSEUM館長である、東京大学名誉教授の辻惟雄氏が出した『奇想の系譜』という本がそもそものきっかけ。

それまで、日本文化の象徴とされていた「わび」や「さび」から外れてしまっていたために、日陰に置かれていた日本美術や画家たちにスポットを当てたこの本によって、伊藤若冲や曾我蕭白などの画家たちが再評価されるようになりました。

その後、じわりじわりと人気が出始めた伊藤若冲。2000年に京都国立博物館で開催された大回顧展でその人気は不動のものになり、現在に至るまでブームは続いています。

そんな人気の伊藤若冲。地元である京都を中心に、多くの美術館が伊藤若冲作品を収蔵しています。そのなかからオススメの美術館を紹介します。

【INDEX】
■宮内庁三の丸尚蔵館(東京)
■MIHO MUSEUM(滋賀)
■京都国立博物館(京都)
■相国寺承天閣美術館(京都)
■細見美術館(京都)
■佐野市立吉澤記念美術館(栃木)
■静岡県立美術館(静岡)
■千葉市美術館(千葉)
■【現在休館中】大倉集古館(東京)
■金刀比羅宮(香川)


伊藤若冲の作品を収蔵している主な美術館(オススメ順)

いずれの美術館も、若冲の作品を常時展示はしていいません。また、他の美術館の企画展に貸し出されている場合もあります。出かける前に、公開情報をチェックしておきましょう。

■宮内庁三の丸尚蔵館(東京)
~一生に一度はぜひ見ておきたい『動植綵絵』

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宮内庁三の丸尚蔵館 外観 写真提供:宮内庁三の丸尚蔵館

皇居の東御苑内にある、皇室に受け継がれた宝物を展示する美術館。若冲の代表作である『動植綵絵(全30幅)』や、『旭日鳳凰図』を所蔵。ニワトリだけでなく、花や雪、魚などなど、全てが緻密に描かれています。あまり公開されない作品群なので、こまめにスケジュールを確認しておきましょう。

<DATA>
住所:東京都千代田区千代田1-1
TEL:03-5208-1063
開館時間:
3月1日~4月14日 9:00~16:15(入館は16:00まで)
4月15日~8月31日 9:00~16:45(入館は16:30まで)
9月1日~10月31日 9:00~16:15(入館は16:00まで)
11月1日~2月末日 9:00~15:45(入館は15:30まで)
入館料:無料
休館日:展覧会期間中の毎週月曜日,金曜日、年末年始、展示替期間
公式サイト


■MIHO MUSEUM(滋賀)
~21世紀に突然見つかった巨大な名作『象鯨図屏風』

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伊藤若冲 象鯨図屏風 右隻 MIHO MUSEUM蔵

2008年になって北陸地方の旧家から発見された巨大な屏風『象鯨図屏風』は、各隻(せき:屏風の単位)3メートル近い横幅を持ち、左隻の鯨図と並べて見ると、圧巻の大きさです。そんな巨大な屏風にどっしり構えるのは象と鯨、インパクトの強い作品です。

この屏風を収蔵することになったMIHO MUSEUMは、このほかにも数点、若冲の作品を収蔵。前館長は若冲を再発見し、現在にいたるブームのきっかけを作った名著『奇想の系譜』の著者、辻惟雄氏。江戸などの近世絵画のコレクションが急速に充実しています。

<DATA>
住所:  滋賀県甲賀市信楽町桃谷300
TEL:0748-82-3411
開館時間:10:00~17:00
入館料:大人1100円 高校・大学生800円、小学・中学生300円
休館日:不定休
公式サイト

※MIHO MUSEUMは関西の美術館でも紹介しています。


■京都国立博物館(京都)
~若冲が生まれ育った京都、収蔵品は多数


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京都国立博物館 明治古都館(重要文化財)


釈迦の入滅(お亡くなりになる)のときの模様を描いた水墨画、「釈迦涅槃図」の登場人物を、大根や野菜に置き換えた『果蔬涅槃図』をはじめ、若冲の作品を多く持つ博物館です。精緻な絵だけでなく、若冲は、さまざまな画風を持っていたことが伺えます。水木しげるの絵を彷彿とさせる、モノトーンで描かれた幻想的風景図『石峯寺図』も雰囲気があり面白いです。

お寺や個人からの寄託(きたく:作品をきちんとした保存するため博物館に預かってもらうこと)されている若冲作品も多く、その作品群が展示されることもあります。

ただいま、京博の明治古都館は免震改修他の基本計画を進めるため、休館中。現在は2014年にオープンした平成知新館にて平常展示が行われています。

<DATA>
住所:京都府京都市東山区茶屋町527
TEL:075-525-2473
開館時間:9:30~18:00
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)
入館料:展覧会ごとに異なる
※平常展示館建替工事中のため、臨時休館あり
公式サイト

※京都国立博物館は関西の美術館でも紹介しています。


■相国寺承天閣美術館(京都)
~鮮やかな若冲、モノトーンの若冲、どちらも収蔵

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伊藤若冲 鹿苑寺大書院障壁画 葡萄小禽図床貼付

相国寺および金閣寺、銀閣寺などが所有する墨蹟・絵画・工芸品等の文化財を収蔵・展示している美術館です。

もともと、若冲はこの相国寺とゆかりがあり、宮内庁三の丸尚蔵館に収蔵されている『動植綵絵』は若冲が相国寺のために寄進したものだそう。当時は、同じく色鮮やかな『釈迦三尊像』などとともに、一つのお部屋に並べて飾られていたとのことです。

重要文化財にも指定されている『鹿苑寺(金閣寺)大書院障壁画 葡萄小禽図床貼付』は常設で展示されています。水墨画で描き込まれた若冲のモノトーンの世界を堪能できます。

<DATA>
住所:京都府京都市上京区今出川通烏丸東入相国寺門前町701
TEL:075-241-0423
開館時間:10:00~17:00
入館料:展覧会ごとに異なる
休館日:年末年始、展示替期間
公式サイト


■細見美術館(京都)
~リアリスティックな作品からユーモラスな作品まで所蔵

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伊藤若冲 糸瓜群虫図


ヘチマのつるが生き物のようにうねっている『糸瓜群虫図』のようなリアリスティックな絵から、ササっと描いたかのように見える『瓢箪図』、一見するとゆるキャラ風な『伏見人形図』など、多様な作風の若冲作品を多く収蔵しています。また、クリアファイルやポチ袋など、若冲作品を使ったオリジナルグッズも揃っており、若冲をめぐる京都への旅では、ぜひ訪れたい美術館です。

<DATA>
住所:京都府京都市左京区岡崎最勝寺町6-3
TEL:075-752-5555
開館時間:10:00~18:00
入館料:展覧会ごとに異なる
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)、展示替期間

 


公式サイト


※細見美術館は関西の美術館でも紹介しています。


■佐野市立吉澤記念美術館(栃木)
~長い巻物には若冲が描く、虫やカエル、キノコが

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伊藤若冲 菜蟲譜(部分)

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アップのカエルがかわいい!

旧家・吉澤家のコレクションを元に作られた栃木県佐野市の美術館。『菜蟲譜(さいちゅうふ)』は、前半には四季の野菜や果物、後半には昆虫やは虫類などの生き物 が描かれている全11メートルにも及ぶ絵巻物。長らく所在不明の作品だったのですが、1999年に72年ぶりに発見され、2009年に国の重要文化財入りした作品です。

とても長い絵であるのに細部にいたるまで、細かく、そしてユーモラスに描かれています。かわいいカエルがたたずんでいる場面や、細かいひげ根まで描き込んだ里芋、色とりどりのきのこ類など、全ての部分が見所です。

美術館には、菜蟲譜に登場するかわいらしいカエルをモチーフにしたバッグや手ぬぐい、マウスパッドなど、この美術館でしか手に入らない、オリジナルグッズも充実。若冲ファンなら、ぜひ手に入れておきたいアイテムです。

<DATA>
住所:栃木県佐野市葛生東1-14-30
TEL:0283-86-2008
開館時間:9:30~17:00
入館料:一般510円 大学生以下無料
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)、祝日の翌日、年末年始、展示替期間

 


公式サイト




■静岡県立美術館(静岡)
~升目で描かれた、さまざまな動物たち

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伊藤若冲 樹花鳥獣図屏風 右隻

2010年にリニューアルオープンした静岡県立美術館。 ドット絵のように、升目を並べて動物たちをカラフルに描いた『樹花鳥獣図屏風』を収蔵しています。毎年4月から5月、ゴールデンウイークの時期に特別展示されています。

<DATA>
住所:静岡県静岡市駿河区谷田53-2
TEL:054-263-5755
開館時間:10:00~17:30
入館料:企画展ごとに異なる
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始、展示替期間

 


公式サイト



■千葉市美術館(千葉)
~関東地方で若冲作品が充実


伊藤若冲undefined鸚鵡図

                      伊藤若冲 鸚鵡図


エスニックな意匠を凝らした止まり木に佇んでいる『鸚鵡図』や水墨でダイナミックに描いた『海老図』など、若冲の佳品を多く収蔵している美術館です。江戸をテーマとした企画展示などで関連作品とともに取り上げられることが多いので、展示スケジュールをチェックしておきましょう。

<DATA>
住所:千葉県千葉市中央区中央3-10-8
TEL:043-221-2311
開館時間:10:00~18:00(金曜、土曜は20:00まで)
入館料:展覧会ごとに異なる
休館日:毎月第1月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始

 


公式サイト



■【現在休館中】大倉集古館(東京)
~若冲は版画にも挑戦

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伊藤若冲 乗興舟(部分) 大倉集古館蔵

ホテルオークラ創始者大倉喜七郎の父で、明治の実業家大倉喜八郎が1917年に創立した日本初の私立美術館です。

『乗興舟』は、観月橋(京都・伏見)より天満橋(大阪)へ至る約40キロの淀川の光景を描いた、長さ10メートルを越える拓版画(たくはんが:拓本の技術で刷った木版画のこと)。若冲は版画も刷るんですね。

ちなみに、京都国立近代美術館には同じ版で刷った『乗興舟』ものが、千葉市美術館、三井記念美術館にそれぞれ違う版で刷った『乗興舟』があります。さまざまなバージョン違いの作品を、それぞれの美術館で見比べるのも面白いです。

大倉集古館は施設改修工事のため休館中。再オープンは2019年を予定しています。

<DATA>
住所:東京都港区虎ノ門2-10-3
TEL:03-3583-0781
開館時間:10:00~16:30
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始、展示替期間

 

公式サイト


伊藤若冲の作品のある神社

信心深かった若冲、彼は全国のお寺や神社に障壁画やさまざまな絵などを残しています。その一部も合わせてご紹介します。

寺社に収蔵されている若冲の作品は常時展示されていません。また、他の美術館の企画展などに貸し出されている場合もあります。出かける前に、公開情報をチェックしておきましょう。

■金刀比羅宮(香川)
~「こんぴらさま」の奥書院に咲く若冲の花々

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伊藤若冲 金刀比羅宮奥書院障壁画 花弁図

色鮮やかな植物たちが壁一面に咲き乱れる「金刀比羅宮奥書院障壁画 花弁図」は、わずか六畳の部屋でありながら、金地の壁一面が若冲の筆によるリアルで繊細花々で埋め尽くされており、圧巻。普段は非公開であるものの、ときどき特別公開されるので、香川で「こんぴらさま」にお参りに行くときは、公開スケジュールをチェックしてください。

<DATA>
住所:香川県仲多度郡琴平町892-1
TEL:0877-75-2121
開館時間:8:30~17:00
拝観料:一般800円、高・大生400円、中学生以下無料
休館日:不定休

 

公式サイト


以上、伊藤若冲の作品を収蔵している主な美術館や神社をご紹介しました。
多くの作品を残し、そのどれもが見る人の心を強烈に掴む伊藤若冲。
作品を生で見ると、さらに引き込まれてしまいます。

その作品が持つ引力を、ぜひ一度体験してぜひ体験してください。

※開館時間、休館日は変更がある場合があります。事前に公式サイトでお確かめください。
※記事内で紹介している収蔵品は、展示されていない場合もあります。
    
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。