年金型保険に相続税と所得税を課すことは「二重課税」で違法/最高裁判決
報道によると、今回、訴訟の対象となったのが第一生命保険の「年金払い生活保障特約付き終身保険」です。原告のご家庭では、ご主人の死亡時に死亡保険金として4000万円を一括で、そして、10年間の分割支給で2300万円を受け取れる保険契約を締結していました。
不幸にして2002年10月にご主人(享年41歳)が亡くなった際、死亡保険金の一括分4000万円と分割払いの第1回分となる230万円を原告である主婦(奥様)は受け取りましたが、その際、年金230万円から必要経費を差し引いた約220万円が雑所得と認定され、所得税が差し引かれました。
「相続財産に所得税は課さないと規定した所得税法に反しているのではないか」――
こうした疑問を抱いた主婦は、これを不服として国税不服審判所に申し立てをしました。ところが認めてはもらえず、2005年8月に思い切って提訴に踏み切りました。
2006年11月の第1審(長崎地方裁判所)判決では、「二重課税に当たる」として原告側の主張が認められました。しかし一転、2007年10月の第2審(福岡高等裁判所)判決では逆転敗訴となり、国側の主張が認められて1審判決は破棄されてしまいました。
「大切な人を亡くしてもらうお金。1円だって無駄にしたくない」――
こうした主婦の思いはさらに強くなり、最高裁判所へと上告の決意を固めました。そして、ご主人の病死から8年が過ぎようという今年7月、頂上決戦の末、ようやく悲願の勝利を手にすることができました。「課税は適法」とした2審判決を破棄、所得税の課税処分が取り消され、勝訴した1審判決が確定したのです。こうして5年間の長きにわたる争いが、1つの決着を迎えることとなりました。
「無知ほど怖いものはない」ことを知らしめた、今回の二重課税判決
今回、色々と調べて初めて知ったのですが、1968年からこうした二重課税は“常識”とされていたそうです。同年に発せられた「保険型年金の年金部分は相続財産に当たらない」という国税庁の通達が広く行き渡り、40年以上、税金の“二重取り”が続けられてきました。この不手際、一体、誰に責任があるのか?―― 政府、国税庁、それとも生命保険会社…… この答えは、これからの対応を待つしかありません。しかし、あらゆる商行為に対して自己責任が問われるようになった今日、本件に関して「われわれ消費者が完全な被害者」という図式は単純に成立しないものと思われます。住宅販売に話を移すと、「不動産業はトラブル産業」と言われるように、業者側の不誠実な対応・説明がトラブルを引き起こす一方で、消費者側の勉強不足や「分かったつもり」が後々のクレームを誘引することも珍しくありません。説明は受けたものの、きちんと理解していないがために、結果として意見の食い違いが生じてしまうのです。知らなかったでは済まされないことが、世の中には多々存在しています。
かなり前置きが長くなりましたが、次ページで説明する「担保の二重取り」も、今後、社会問題になるような気がしてなりません。金融機関は住宅ローンの融資と引き換えに、「抵当権の設定」と「保証会社による保証」という2つの“負担”を消費者に課しています。「違法」「適法」という次元での議論では決してありません。「常識」「非常識」の分別が問われようとしているのです。
年金型保険の二重課税ならぬ、住宅ローンに関する「担保の二重取り」が公然と行われ続けています。賢い消費者はこうした現状に「NO」を突きつけなければなりません。
次ページで詳しく、現状をご説明することにします。