(Q)
今回のカリキュラムの改訂により、公立と私立の格差が拡大しませんか。
(A)文部科学省の回答
学習指導要領は、国立・公立・私立の別なく遵守すべき教育課程の基準ですから、私立学校もこれに従い教育課程を編成実施します。
国公私立の学校を通じ、総合的な学習の時間における創意工夫を生かした教育活動、中学校における豊富な選択教科の開設、高等学校における多様な選択科目や学校設定教科・科目の開設などを行い、各学校が子どもたちや地域・学校の実態等に応じて創意工夫を生かした特色ある教育課程を編成することになります。また、完全学校週5日制も国公私立を通じて実施することが求められています。
(★)
しかしながら、完全週5日制に関しましては、「2002年教育問題」(日能研)によりますと、「指導要領に拘束されない私学にあっても格別の異議申し立てがあるわけではありません。しかし、キリスト教系の学校では既に宗教的理由から5日制のカリキュラムを組んでおり、また進学校では教育成果を考えて6日制維持にこだわる学校も多く、さらにその一方でカリキュラム改革の絶好のチャンスとして積極的に5日制に移行する学校もあり、やはり非常に個性的で多様です。」ということです。
完全週5日制に関して、文部科学省は3月4日、全国の私立校の実施状況の調査結果を公表しました。来月実施するのは、中学校では全体の4割、高校は6割で、都市部で少ないのが目立っています。「授業時間数の減少で学力が低下する」という不安に配慮した結果と見られています。
今年の中学入試問題に新学習指導要領の影響が出ていたかどうかに関しては、円周率を3に指定する学校も若干はありましたが、全体的に見て、要求されている計算力については著しい低下は見られず、依然として速く正確に計算する力は必要となっているようです。しかしながら、全般的に見て、算数、理科、社会の難度は下がり、国語はここ数年の傾向と同じく、記述重視の傾向にあったということで、新学習指導要領の影響がでているかどうかは、今年の結果だけでは言及できないということでした。
また、公立と私立学校の授業内容の格差に関しましては、大学の入試と新学習指導要領が連動していないようですので、いわゆる私立の進学校と呼ばれる学校では、今後も中学1年から6年間のカリキュラムを組んで大学入試の準備が行われるでしょう。
それに比べて、公立中高から大学受験を考える場合、中学では学習内容が大幅に削減されているわけですから、高校に入ると、今度は高度な内容を大急ぎで詰め込まなくてはならないと言われています。公立と私立の格差が拡大しないとは思えないのです。
子どもを持つ親は不安でいっぱいの方が多くいらっしゃるのではないでしょうか。この改革には現場の声や親の意見は反映されているのでしょうか。疑問は尽きません。子どもをもつ親は、子どもの教育に関して、それぞれの自己責任で対処していかなければならない時代がやってきたように思います。
【関連サイト】
「新教育課程Q&A」(文部科学省)
「2002年教育問題」(日能研)
「新学習指導要領を勉強しよう!」(Close Up)
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