兼好法師は、有名な「徒然草」の中で「家のつくりやうは、夏をむねとすべし」と書いています。こんな故事にもあるように、わが国の住宅は夏の暑さをいかにやり過ごすかに主眼をおいて建てられてきました。

昔の住宅から学ぶ快適術とは

そこで昔ながらの住宅を例に、どのような工夫が行われていたのか確認しましょう。まずは間取り。フスマや障子というのは、空間をフレキシブルに使うのに適していました。開けば大空間に、閉めると用途に合わせて間仕切ることができるからです。

明治初期に建てられた住宅の内部空間。フスマで間仕切られており、大空間を上手に活用できるようになってい上、風通しもいい

明治初期に建てられた住宅の内部空間。障子で間仕切られており、大空間を上手に活用できるようになっている上、風通しもいい

夏に快適に過ごすためのコツの大部分は、風を居住空間に導くこと。フスマや障子を開くと、外と空間的なつながりができますから、それが容易になるわけです。ですから、間取りを考える上で、まずは大空間、次に引き戸を採用することが非常に有効になります。

日本の住まいは戦後、急速に西洋化しました。それは同時に、空間を極度に間仕切って使用することでしたから、どうしても住宅の中に空気の流れを遮断する方向に向かっていました。一方、最近の新築住宅のトレンドはできるだけ大空間とし、仕切らない方向性にあります。

階段や欄間にも快適にするための工夫が

これは、夏の暑い時期でも外の空気を住宅の中に取り込むための配慮があるのです。例えば階段などにも工夫がうかがえるようになってきました。近年のトレンドでは「階段室」を設けるのではなく、スケルトンだけのタイプのものや、らせん階段なども積極的に取り入れられるようになってきました。

現代の欄間の実例。ドア上部に設けることで風の通り道を作っている(写真はミサワホームのモデルハウス。クリックすると拡大します)

現代の欄間の実例。ドア上部に設けることで風の通り道を作っている(写真はミサワホームのモデルハウス。クリックすると拡大します)

これらは、1階から2階へ、またはその逆へと風を通りやすくする配慮です。このほかに欄間(らんま)があります。これも、住宅内に空気の流れを作るための設え。それを現代の暮らしに採り入れたのが、右の写真のような工夫。これだとドアで間仕切りをしても建物内の空気の流れを遮断しません。

ところで、空気を建物内に通すには建物上部に、排気をする仕組みが必要です。昔ながらの住宅にはこのような仕組みがあったのですが、現代の住宅でも同様な配慮が行われるようになってきました。それが、トップライトと呼ばれる窓の採用。トップライトを設けることで、「煙突効果」が生まれ、下階の暖められた空気が排出される仕組みです。

ここまでは居室内の空気の流れに着目してきました。次のページではこれ以外のポイント、湿度や日照について書いてみたいと思います。