では、昭和16年4月1日以前に生まれた人が繰下げ受給した場合を、同じ条件で考えてみましょう。
【1年間繰下げて66歳から老齢基礎年金を受給する場合】
65歳で受給開始し74歳4ヶ月(=9年4ヶ月)までに受給する年金総額 | 60万円×9年4ヶ月=560万円 |
1年繰下げて66歳から受給開始する場合の年金額 | 60万円×112%÷100=67.2万円 |
66歳から74歳4ヶ月(=8年4ヶ月)までに受給する年金総額 | 67.2万円×8年4ヶ月=560万円 |
【5年繰下げて70歳から老齢基礎年金を受給する場合】
65歳で受給開始し75歳8ヶ月(=10年8ヶ月)間に受給する年金総額 | 60万円×10年8ヶ月=640万円 |
5年繰下げて70歳から受給開始する場合の年金額 | 60万円×188%÷100=112.8万円 |
70歳で受給開始し75歳8ヶ月(=5年8ヶ月)までに受給する年金額 | 112.8万円×5年8ヶ月=639.2万円 |
65歳時の年金額60万円の人が、受給を5年繰下げて70歳から開始し80歳まで10年間に受け取る年金額を比較すると
昭和16年4月1日以前に生まれた人 | 昭和16年4月2日以降に生まれた人 | |
受給年金額 | 112.8万円 | 85.2万円 |
受給年金総額 | 1128万円 | 852万円 |
繰下げ効果 | +228万円 | ?48万円 |
65歳から年金を受け取った場合80歳までの受給年金総額は60万円×15年=900万円です。昭和16年4月2日以降に生まれた人は、5年繰り下げると年金受給総額が48万円も少なくなってしまいました。理由は損益分岐点が12年だから。82歳以上にならないと繰下げメリットがでないのです。このように繰下げには驚くほどの世代間格差があります。
昭和16年4月1日以前に生まれた人は、
・繰下げ受給しても収益分岐年齢が75歳前後と早い→寿命リスクが少ない
・支給率が高い→年金加算額が多い
という素晴らしい繰下げメリットがあります。
平均寿命が男性78.32歳、女性85.23歳という長寿時代。昭和16年4月1日以前に生まれた人で老後資金や健康状態などの諸問題をクリアーする人は、「老齢基礎年金の繰下げ受給」を資産運用の一つとして考えるのも面白いのではないでしょうか。