失業保険をもらうと年金がストップする

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失業保険(基本手当)の日額は60歳以上65歳未満の場合、給料(離職前6カ月間の平均)の1日分の45%から80%となっている
会社を辞めて就職活動中に雇用保険から支給される失業保険(正式名称は「基本手当」といいます)。60歳になり定年退職した場合や、60歳以降退職した場合についても、一定の要件を満たせば受け取ることが可能です。

一方で60歳以降、これも一定の要件を満たすことで「特別サービス」の老齢厚生年金(60歳代前半に支給される老齢厚生年金)も受け取ることができます。

【参考】タイムサービスの「特別支給の老齢厚生年金」とは?

この失業保険と年金を両方受け取れたら最高なんですが、残念ながら現在は不可能です。この2つの制度はどちらか選択ではなく、失業保険を受け取る手続き(求職の申し込み)をした時点で、年金が失業保険を受け取っている期間、ストップする仕組みになっています。

過去は両方受け取ることができた!

もし、この記事を70歳以上の方がご覧になっているとしたら、「私は両方受け取れたよ」とおっしゃるかもしれません。

そのとおりで、失業保険と年金は過去、両方受け取ることができました。平成10年3月までは、両方受け取ることができたのです。現役世代の給料よりも両方の受取額のほうが多い! という場合も少なくなかったはずです。

いい時代だったんですね。しかし、これだけたくさん受け取れると、60歳以降に積極的に働こうとはなかなか思えなくなるのも事実です。

本来、失業保険(基本手当)とは、再就職の意思・能力があるのにもかかわらず職業に就くことができない場合の生活保障です。リタイア後の老後保障である年金とは支給する主旨が違うわけで、今まで両方支給していたのがおかしいといえばそれまでですが、それだけ年金財政がひっ迫してきたともいえるのでしょう。

「得なほうを受け取る」だけでは失業保険は受け取れない
 

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老齢年金は所得税の対象だが、雇用保険は非課税
失業保険と年金を両方受け取れないなら、どちらか得なほうを受け取りたいと思うのが人情ですよね。どちらがたくさん受け取れるのかは人それぞれですが、注意点があります。

失業保険は「失業の状態」(再就職する意思・能力があるのにもかかわらず、職業に就くことができない状態)にあることが支給の大前提です。

再就職するつもりが全くなく、「年金よりも失業保険を受け取るほうが得」という理由では失業保険を受けることはできません

会社を辞めたら失業保険を受け取れるのが当たり前、と思っている方も少なくありませんが、あくまでも「失業の状態であること」が前提となることを十分理解しておいてください。ハローワークでの再就職の意思があるか否かのチェックも、案外厳しいものがあります。

65歳以降に退職した場合はどうなる?

さて、失業保険との関係で調整される年金は、あくまで「老齢厚生年金」で、しかも「60歳代前半に支給される老齢厚生年金」に限られます。「それなら、65歳以降に辞めれば両方受け取れるの?」と質問する方もいるかもしれません。

答えは△です。65歳以降に退職する場合は、雇用保険から支給される失業保険(基本手当)が一時金(正式には高年齢求職者給付金)となってしまいます。例えば雇用保険に20年以上加入していた人(就職困難者は除く)は、基本手当なら最高150日分受け取れるのに対し、高年齢求職者給付金の場合は50日分しか受け取れません。

両方受け取れることになるけれど、失業保険が少なくなってしまう……だから△ということなのです。

レアケースだが「裏ワザ」があった!?

失業保険が基本手当になるのか、高年齢求職者給付金になるかは退職日で決まります。退職日が65歳未満(正確には65歳の誕生日の前々日まで)であれば、受け取る時に65歳になっていたとしても、失業の状態である等要件を満たせば「基本手当」を受け取ることができます。65歳以降に受け取る年金は基本手当との調整がありませんので、基本手当と年金を両方受け取ることが可能となります。

ですから65歳直前に退職し、失業保険を受け取るのが65歳になってからなら、年金も同時に受け取れるということになります。ちょっとした「裏ワザ」ですね。

ただ、65歳定年制の会社で65歳の定年直前に辞めたばっかりに、定年退職で受け取れる退職金を受け取れなかった(あるいは減額された)など、両方受け取れること以上の不利益を被る可能性もあります。

この裏ワザを使う場合は、直前で辞めるデメリットもしっかり検討した上で決断する必要があるでしょう。

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