アメリカの年金制度~基本的なしくみ

アメリカの年金制度の特徴は?
アメリカの公的年金制度は老齢・遺族・障害保険(OASDI)という制度で、一部の例外を除き、一般被用者(民間企業の会社員や公務員)と自営業者は強制加入が義務付けられています。自営業者については年収が400ドル以上という年収要件がありますが、一般被用者・自営業者とも、年齢にかかわらず仕事を続けている限り、OASDIへの加入が義務付けられています。

OASDIは1937年に始まった制度ですが、スタート当初は公務員が適用対象外でした。現在は、1984年以降に採用された連邦政府職員は強制加入、州・地方政府職員は協定により団体で任意加入することができます。このため、公務員はOASDIの上乗せとなる独自の年金制度を持っています。

【アメリカの公的年金のしくみ】


一方、日本では第3号被保険者に該当する専業主婦や第1号被保険者に該当する学生や無職の人はOASDIに加入することができません。アメリカには日本のような個人単位の任意加入制度がないので、希望しても強制加入の対象となっていない人は、OASDIに加入することはできません。

OASDIは、日本公的年金制度と同様に社会保険方式により加入者が保険料を負担します。OASDIの保険料は、被用者も自営業者も報酬に同じ保険料率を乗じた金額ですが、自営業者は全額自己負担、被用者は日本の厚生年金と同様、労使折半で負担します。ただし、保険料算定の対象となる報酬には上限があります。OASDIの加入者は、社会保障税として保険料が徴収されます。

OASDIの年金支給の財源に日本のような国庫負担はありませんが、年金給付に対して課税した税金を財源の一部にしています。そのほかの財源として、保険料(社会保障税)と積立金の運用収入がありますが、積立金の運用は全額債券(アメリカ国債と政府保証債)で運用され、株式で運用することは法律で禁止されています。

アメリカの年金制度~年金支給のしくみ

OASDIの支給する年金は
  • 老齢年金

  • 家族年金

  • 遺族年金

  • 障害年金
の4種類です。日本の公的年金制度には「家族年金」はありませんが、家族年金とは老齢年金の受給者の配偶者と18歳未満の子どもに支給する年金なので、日本の老齢厚生年金の加給年金額に相当する年金といえます。

上記の年金のうち、老齢年金の支給のしくみをみていきましょう。

●受給資格要件
OASDIの受給資格を満たすためには原則10年間の加入が必要ですが、保険料納付要件の考え方が日本とは異なります。日本では月単位に保険料納付要件を判定しますが、アメリカは四半期ごと1年間の収入額に応じて1クレジット(単位)とカウントします。最高で4クレジットが付与され、40クレジット(10年相当)で受給資格を満たすことができます。

●支給開始年齢
OASDIの支給開始年齢は2002年まで65歳でしたが、段階的に支給開始年齢が引き上げられていて、2009年から2020年の支給開始年齢は66歳です。1960年以降生まれの人については、67歳が支給開始年齢となる予定です。
日本と同様、支給開始の繰上げ・繰下げの選択も可能で、繰上げにより62歳からの支給、および70歳までの繰下げ支給を選択することができます。繰上げ支給については一定の減額、繰下げ支給については一定の増額が行われます。

●年金額
OASDIは、全加入者とも報酬に応じた保険料を納めているので、報酬比例の年金額になっています。年金額の計算には、日本の公的年金制度と同様に再評価後の平均賃金月額(「AIME」といいます)を使用し、さらに年齢やインフレ調整率などを考慮して年金額を計算します。また、日本の在職老齢年金制度と違って、年金以外の所得で種類を問わず一定額を超える所得がある人は年金の減額が行われます。

アメリカの年金額の計算は、日本の老齢厚生年金の年金額と同様、計算の仕組みが複雑ですが、英語が使える場合はアメリカの社会保障庁のHPで年金額の計算が行えるサイトがあります(年金額計算サイト)。

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