公立も巻き返し、盛り上がる神奈川県の中学入試
2009年開校の公立中高一貫、県立平塚中等教育学校(平塚市大原)と県立相模原中等教育学校(相模原市相模大野)についてみてみましょう(以下、神奈川県教育委員会神奈川県立中等教育学校説明会資料にもとづいて解説)。
前者は県立大原高校が、後者は県立相模大野高校が再編されて開校します(2011年まで高校も募集あり)。両者とも設置目的を「個性や創造性の伸長」「よりより社会の構築に貢献する意欲・資質・能力の育成」「豊かな人間性とリーダーシップの育成」とし、2学期制で授業時間45分7校時を基本とします。
6年間の教育活動について、「基礎・観察=(基礎・基本の学習)」「充実・発見=視野を広める学習」」「発展・伸長=個性に応じる学習」として2年ごと3期に分けていますが、これは具体的には中学段階から高校レベルの教育も行っていくということ。
選考方法は、適性検査(選考配分6割)、グループ活動(2割)、作文(1割)(以上各45分)、調査書(1割)。選考方法の具体的内容は先述した設置目的を反映したものとなり、適性検査では「表現コミュニケーション力」「科学・論理的思考力」「社会生活実践力」の3点をみます。グループ活動では「集団の中での人間関係構築力」を、作文では「中等教育学校で学ぼうとする意欲や目的意識」をみます。
適性検査の例として、説明会資料では「ゴミ問題」「森の役割」「雨水と汚水」の各テーマについてクラスの話し合いの場面を想定したうえでの出題、また資料読解を含む出題などを示しています。記述式が主で、科学分野・社会分野・国語分野など教科横断的な問題構成となっています。
グループ活動の例としては、「地球温暖化防止を呼びかける」をテーマにグループで話し合い、作業(作品制作)、自己評価などを行う課題を挙げています。
作文の例としては、「あなたは中等教育学校での6年間で、どのようなことを学びたいと考えていますか。400字以内で書いてください」というテーマが示されています。
志願動向をみてみると、県立平塚は募集定員男女各80人、男子志願者数432人(競争倍率5.4倍)、女子志願者数600人(7.5倍)。県立相模原は募集定員男女各80人、男子志願者数1172人(競争倍率14.65倍)、女子志願者数1454人(18.18倍)。
公立中高一貫校は東京、千葉など首都圏ですでに12校あり(2008年現在)、これらの学校のほとんどが倍率二桁、あるいは二桁に迫る勢いで推移しています。後発となった神奈川でも高倍率となり、受験生・保護者の関心の高さがうかがえます。ただし、神奈川は私学の上位校だけでなく公立の上位伝統校も少なくないこともあり、産声を上げた2つの公立中高一貫校の教育の内実が、今後の評価を左右することになるでしょう。
公立高校の動きとして、理数教育に特化した教育を行う横浜市立横浜サイエンスフロンティア高校(横浜市鶴見区)が2009年に開校します。同校では小中学生を対象に科学講座や体験会を企画する予定。こうした学校の創設も、神奈川の中学受験動向に新たな影響を与えていく可能性がないとはいえません。
神奈川では私立・公立とも学校再編や教育改革、創設などが引き続き盛んに展開されることでしょう。志望校選びには常に新しい情報を仕入れ、柔軟な姿勢で受験生に合った学校を検討してください。
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