投資信託を売るタイミング、いつがいい?
投資信託協会のデータによると、2017年12月末現在の株式投資信託の純資産総額は111兆1920億円となり、過去最高となりました。日本の株式市場が値上がりしたことに加え、NISAでの投信の積立が注目されたりiDeCo(個人型確定拠出年金)の対象者が広がったり、個人の投信購入の増加も理由として考えられます。また2018年1月から積立NISAも始まり、個人の投資信託購入はこれからますます増えそうです。投資信託が値下がりした! いま売るべき?
2018年2月上旬、日経平均株価が大きく下落しました。この株価下落は「調整」、つまりちょっと勢いよく上がりすぎちゃったのでいったん冷静な価格まで戻ったもの、と言われています。調整は規模や期間の違いはあるもののたびたび起こるもので、調整されたあとは(経済状況の大きな変化がなければ)また値上がりしていきます。今回の株価下落で、日本株式に投資している投資信託の多くも値下がりしました。自分が持っている投資信託が値下がりして、不安になった方もいるでしょう。これだから投資は嫌だ、いっそ全部売ってしまいたいと思った方もいるかもしれません。
そんなときに思い出してほしいのが、「投資信託ってどういう商品だったっけ?」ということです。個別の株式に投資しているなら、市場の変化を見ながら売買していくことが必要です。でもあなたが持っているのは投資信託です。面倒なことをすべてプロ(ファンドマネージャー)がやってくれるのが投資信託のよいことろのはずです。投資信託の購入者は、自分では何もしなくても(投資信託を持っているだけで)、常に有望と思われる銘柄を保有し、見込みのない銘柄を除くことができるわけですから、投資信託自体をタイミングを見計らってこまめに売買する必要はないのです。いますぐ売らなければいけない事情がないのなら、わざわざ値下がりしている時に売る必要はありません。
売って、そのあとどうするの?
「運用がまったく上手くいっていない投信を整理したい」、「外国債券に投資する投信が好調で、気づいたら自分の資産の半分近くが外国債券になってしまった。これでは資産のバランスが悪いので、少し売って日本の株式に投資する投資信託を買い足したい」などという場合は、売却してほかの投資信託を購入するというのは有効なことです。しかし、「値下がりして不安だから売ろう」「値上がりしたからとりあえずいったん売ろう」という人に「売って、その後どうするんですか?」と質問すると、「何か別の投資信託を探して買おうかな」という答えが返ってくることがあります。そういう人は、投資信託を売買することでかさんでいくコスト(購入手数料や解約時の信託財産留保額) を忘れているのかもしれません。
売却して、また似たような何かに投資するというのなら、売却しないで今の投資信託を持ち続けたほうがコストは少なくて済みます。一時的に値下がりしたとしても、上手な運用を行っている投資信託をわざわざコストをかけて売る必要はありません。運用が基本的に上手な良い投資信託なら、値下がりした時は安く買い増すチャンスとも言えます。
投資信託の売り時とは?
では、投資信託はいつ売却するのがよいのでしょうか。それは、「お金が必要になった時」です。「そろそろ家のリフォームが必要かな」「子どもが再来年には大学受験だ」など、お金が必要になる時期が近づいてきたら必要な分だけ売却すればよいのです。「来月までに大学入学金を払わないといけないという時に、その投資信託が値下がりしていたらどうするんですか?」という質問が出そうですね。ここでまたまた基本に立ち返りましょう。
投資は「当面は使わないお金」で行うのが基本です。あと数年で使用時期が来ると思ったら、基準価額が高いと思われる時期に売却し、使用予定時期にちょうど満期がくる定期預金や国債などに預け換えておけばよいのです。「来月までの一カ月」では上手に売るのは困難でも、「数年後までに」というのなら大丈夫でしょう。
このとき、「一番値上がりしているところで売却するぞ!」と欲を出すのは禁物です。一番の高値の予測など難しすぎます。一度に売却する必要はありませんので、利益が出ている時期に一部を売却して安全性重視の資産に変え、残りは引き続き運用を続ける、またしばらく経って資産が増えたら一部を売却して安全性重視の資産に変え……、というように、使用する時期までに数回に分けて売却していってもよいのです。
金融商品のこまめな売り買いは、そのたびに「儲かった!」という気持ちも味わえて楽しいものですが、そういう楽しみは個別株式への投資で味わうのはいかがでしょうか。優れた投資信託は、長期にわたって資産を増やしてくれるものですから、「信じて託す」気持ちで長くつき合うのがおすすめです。