相続時精算課税制度を利用するときの注意点
平成27年1月より、贈与における相続時精算課税制度が改正されました。この制度は、内容の複雑さや、どんな場合に適しているかが分かりづらいことから、利用する人が少ないのが現実のようです。あらためて相続時精算課税についてまとめるとともに、メリット・デメリットを確認しておきましょう。
財産の贈与が行われた場合、その翌年の3月15日までに贈与税の申告をする必要があります。贈与税の課税には「暦年課税(毎年110万円までは申告不要・贈与税がかからない)」と「相続時精算課税」の2種類があり、一定の要件に該当する場合は相続時精算課税を選択できます。
相続時精算課税を選択した場合、まず贈与時に贈与税を納めます。贈与者が亡くなった際には、贈与財産を含めて相続税を計算し、この相続税といったん支払っていた贈与税との差額を支払う(もしくは還付を受ける)ことになります。相続時精算課税を選択して支払った贈与税は、言い換えれば相続税の仮払いのようなものです。
相続時精算課税の制度内容
贈与者と受贈者の関係を問わない暦年課税とは違い、相続時精算課税は一定の直系親族間の贈与に認められた特例です。- 2500万円までは贈与税なしで贈与が可能
- 贈与する側(贈与者)とされる側(受贈者)の条件
贈与財産が一定の要件を満たす住宅取得資金の場合には、贈与者の年齢の制限はありません。これを相続時精算課税選択の特例と言い、平成33年12月31日までに延長されました。
- いったん相続時精算課税を選択したら変更できない
- 将来、相続が発生したときに「精算」する
贈与税および相続税の計算例
相続時精算課税を利用した場合の、贈与から相続までの流れにあわせた税金の計算例は以下の通りです。- 平成20年に父から子へ2000万円贈与
- 平成25年に父から子へ1000万円贈与(平成20年との累計3000万円の贈与)
(3000万円-2500万円)×20%=100万円
- 平成26年に父から子へ110万円贈与
- 平成27年、父に相続が発生(相続人は子が2人)
遺産1億円+贈与財産3110万円-基礎控除4200万円=課税遺産総額8910万円
{(8910万円÷相続人数2人)×相続税率20%-200万円}×2人=相続税1382万円
相続税1382万円-贈与税122万円=1260万円(相続時の納税金額)
※この場合、贈与税は相続税の先払いとなり差し引かれます。
【遺産が1000万円の場合】
遺産1000万円+贈与財産3110万円=4110万円<基礎控除4200万円
※この場合、相続税はかからないため、支払っていた贈与税122万円は全額還付となります。
相続時精算課税のメリット
状況により、メリットとデメリット、注意点があります。まずはメリットから見てみましょう。- 一度に多額の贈与ができる
- 財産移転がスムーズにできる
- 収益物件の贈与なら相続税対策につながる
- 値上がりする見込みの財産を贈与するには有利
- 分けにくい財産でも生前に移転が可能
相続税精算課税のデメリット
一方、デメリットもあります。具体的には次のとおりです。- 一定の直系親族間の贈与に限られ、かつ年齢制限がある
- 金額にかかわらず贈与税の申告が必要
- 贈与財産は相続時に小規模宅地等の特例が受けられない
- 贈与財産は相続時に物納できない
- その贈与者からの贈与は暦年課税に戻せない
- 不動産の贈与の場合、移転コストが高い
相続時精算課税の注意点
最後に、相続時精算課税の注意点をまとめました。- 小規模宅地等の特例とも比較を
- 住宅の贈与は現金よりも住宅のほうが節税になる
- 住宅は着工時期に注意
- 孫が受贈者だと、相続税の面で不利になることも
以前に「将来は相続税がかからない」として相続時精算課税で贈与対策した人も、平成27年の相続税改正で将来は相続税がかかることになる人も少なくないと考えられます。将来の相続税の納税資金対策もお忘れなく。
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