歯の治療はどこまで医療保険で保障されるのか
歯の治療の場合、どのような時に医療保険の給付対象になるのかわかりづらいかと思います。ほとんどの人は歯科医院へ行ったことがあるでしょうが、歯の治療で医療保険の給付対象になっているものはあるのでしょうか?その疑問を解くため、歯科医師へ質問してみました。保険会社の約款を見せ、給付対象になりそうな手術があるかどうかを確認し、また今までの経験についても伺っています。
医療保険の対象となりそうな症状と手術
お話を伺った副島歯科医師
■骨移植術
骨移植術とは、大きな外科手術を行ったときに骨を他の部位から移植する手術のことです。近年では、インプラント手術の前に骨がない場合などに行うことがあるようです。ただ、歯科医院で施術するケースは少なく、通常は大学病院の口腔外科等で手術することになります。
■骨髄炎
骨髄炎は、日常に充満しているブドウ球菌が骨の中へ波及して炎症をおこすもので、強い痛みと腫れを伴います。歯科の領域でも、長期間放置された虫歯や歯周病からの伝染で顎骨髄炎を起こすことがあります。慢性骨髄炎を起こすと歯科医院で抜歯や病巣の除去を行います。重度になると口腔外科等にて処置を行うことになります。
■慢性副鼻腔炎
慢性副鼻腔炎は耳鼻科の領域になりますが、歯の根が原因で起こることもあるので、歯科医院で発見され、口腔外科等で手術を行う場合もあります。
■頭蓋骨観血手術
これは、主に歯の根の病気が原因でなる「のう胞」や、その他、良性・悪性での腫瘍が原因で行う手術です。頭蓋骨に上顎も含まれるので、歯科医院でのう胞摘出の手術を行うことがあります。良性・悪性の腫瘍の摘出は口腔外科等での手術となります。
■その他
生活に支障があるほどの極端な上顎前突(出歯)や下顎(うけ口)で、骨の形成を行った場合も、医療保険の対象となる可能性があります。
一般の歯科医院で手術を行う事はどれもあまりなさそうですが、ケース(症例)によっては一般の歯科医院で手術をする場合もあるようです。
医療保険の対象とならなさそうな手術
歯の治療・手術で医療保険を申請するには、医師の診断書が必要
ただの虫歯の治療は対象外です。
■差し歯、入れ歯、インプラントなどの治療
これらの人工的な歯を入れる治療も手術と呼べますが、残念ながら対象外です。
■歯の矯正、ホワイトニング、クリーニング
どれも治療を目的としていませんので対象外です。
■上顎骨・下顎骨・顎関節観血手術
歯の治療に関係しますが、医療保険の約款に「歯・歯肉の処置に伴うものを除く」と書いてあることが多く、それに伴う抜歯や歯肉の腫れ等の処置も含めて、手術給付の対象とはならなさそうです。
給付金の申請方法
保険会社所定の申請書(加入者が記入)と、医師の診断書(医師が記入)等を提出します。医師に診断書を書いてもらうには、5000円~1万円程度の費用がかかります。対象になるかどうか判断が難しい時は?
約款を読んでも歯科医師に聞いても、給付対象になるかどうか判断が難しい時は、保険の担当者や保険会社が用意しているサービスセンター等で聞いてみるとよいでしょう。お金を払って医師に診断書を書いてもらったにもかかわらず、手術給付金がもらえないこともあります。そうするとお金の無駄になりますので、可能な限り事前に確認しておくのが望ましいです。損保会社から登場した歯の保険も
実は、損害保険会社に歯の治療費用を補償する特徴的な保険があります。日本国内での歯科治療費用で、健康保険が適用される保険診療や、インプラントやブリッジなどの保険外自由診療を補償対象としています。この保険は医療保険ではなく、歯以外の病気やケガは保障対象になっていませんが、歯の治療費用に保険で備えたい人は検討してみるとよいかもしれません。【取材協力】
歯科医師の副島環子さん
(東京都中央区日本橋茅場町1-8-3郵船茅場町ビル3F)
副島医師より一言、「歯は日頃の手入れが大事です。痛みを感じてから歯科医院へ行くのではなく、定期的な検診を心掛けると、いつまでも健康的な歯を保つことができますよ!」
※手術給付金の保障の対象になるかどうかは、保険約款と医師が記入する診断書等により保険会社が最終判断します。この記事で対象となりそうな手術、対象とならなさそうな手術として取り上げていても、保険会社の判断が異なる可能性もありますのでご注意ください。
※生命保険会社等の医療保険と公的な健康保険とでは、対象となる治療(手術等)は必ずしも一致しませんので注意が必要です。医療保険の詳細については、商品パンフレットや約款などで必ず確認して下さい
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