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2016年はもっと盛り上がる?ハロウィン徹底検証

2015年、経済効果が約1200億円にもなったハロウィン。なぜ、日本でハロウィンは急速に成長したのか。その理由について、盛り上がりを見せた10月31日の渋谷を訪れた経験も踏まえ、マーケティング視点で説明します。

新井 庸志

執筆者:新井 庸志

マーケティングガイド

2015年のハロウィンは史上最高の盛り上がりとなった。経済効果は約1200億円、バレンタインと同程度にまでなった。おそらく2016年にはバレンタインを超え、一気に引き離していくだろう。

10月31日に渋谷で感じた異常事態

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渋谷のスクランブル交差点。ハロウィンの日は大勢の人が集まった。

10月31日の夜10時、私は国道246号線を渋谷方面に向けて車で走っていた。普通ならば混まない時間帯なのだが、この日に限り、三宿を過ぎたあたりから渋谷まで左車線が大渋滞していた。ここ10年くらいの間でこんな経験はしたことがない。原因はハロウィンフィーバーに沸く渋谷中心街の影響だ。サッカーW杯の日本代表戦の時なども渋谷のスクランブル交差点には人が大勢集まるが、その時でも、このような渋滞は起きていない。

昨年までのハロウィンでも全くなかった渋滞だ。ちなみに、国道246号線の左車線だけ渋滞していたのは、多くの車が渋谷の駅前でスクランブル交差点のある方向へと左折するためだ。ご存知の通り、スクランブル交差点には仮装した人たちが多数集まっていたのだ。

歩行者だけではない。仮装をしながら車やバイクに乗っている人たちの姿も多く見られた。その多くは郊外や地方ナンバーのバイクや車だった。彼らはゆっくりと走りながら、自分たちをアピールしていた。その結果、スクランブル交差点だけでなく、渋谷一帯は仮装した人たちや車で埋め尽くされる状況となったのだ。ちなみに、渋谷の隣駅にあたる表参道では、仮装した人たちの数はまばらだった。

数年前であれば、渋谷よりも六本木や代官山といった外国人が多く居住しているエリアにおいてハロウィンは人気だった。そこでは自分たちの家を装飾し、玄関前にお菓子を置いておき、親子が訪問するといったものや、ある決まった時間に仮装行列をすることが多かった。この段階では、外国におけるハロウィンのスタイルをほぼ取り入れていたのだが、今の日本のハロウィンは、かなり様相が異なる。そして、ハロウィンは驚くほど、急速に日本人の間に浸透し、拡大していったのだ。

外国人から見た日本のハロウィン

ちょうどこの時期、来日した外国人と仕事をする中で、日本のハロウィンに対する彼らの反応も聞くことができた。やはり彼らは口々に驚きの声をあげた。その理由は大きく2つに分けられる。

第一の理由は、日本の仮装のレベルの高さとバリエーションの豊富さだ。外国でも仮装はするが、日本の仮装はバリエーションが豊富だと口々に言う。そして、そのレベルが高いものも多いとも言う。しかも、メインは子供ではなく大人であり、その大人がグループになってチームのように仮装している。渋谷に集まっている人たちを見て、その人数の多さだけでなく、内容の違いにも驚きを隠せなかったようだ。

第二の理由は、ハロウィン期間の長さだ。外国では基本的には10月31日がハロウィンだ。しかし日本では10月に入るとまもなく、スーパーやコンビニだけでなく、さまざまな場所でハロウィンの装飾、関連商品の発売、プロモーションが始まる。そして街を見れば、10月20日を過ぎたあたりから、渋谷駅周辺では仮装をする人たちが現れ始めていた。この期間の長さは、外国人からすると大変な驚きのようだ。クリスマスについては、日本と外国で期間に大きな差はないが、ハロウィンは大きな差があるのだ。

ハロウィンからわかる日本のプロモーション事情の変化

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プロモーションの期間も長期化している。

最近、ハロウィンに限らず、日本におけるプロモーションについては「より早く、より長く」という傾向が強くなっている。なるべく早い時期からプロモーションを仕掛けることで、メディアや口コミで盛り上がることが大きな理由だ。情報も製品も充足している日本において、消費者にモノを買ってもらうためには、消費者の心を動かすことが重要だ。そのトリガーになりうるものの一つがハロウィンのような季節ならではのトレンドやイベントなのだ。

また、企業側からすると別の理由もある。期間限定商品をより長く売り、キャンペーン期間をより長く行うことで、より多くの商品が売れるということに繋がるからだ。ハロウィンをはじめ、期間限定のものでも、商品開発や店頭装飾などには、時間とお金をかかる。ROI(投資対効果)を高めるためにも、企業側とすればより早く始め、より長く実施したいのだ。

なぜハロウィンブームは大爆発したのか?

ハロウィンブームがなぜ大爆発したのかについては、以前「ハロウィンはなぜ、日本で急速に定着したのか?」の記事で、“日本人が「参加する楽しみ」を知り、それを好む傾向になったことにある”と分析した。今回、私自身もハロウィンの渦の中を体験し、あらためてその傾向を実感した。そこでは、世間で認められた「非日常」に参加して、とことん騒ぎたいという消費者の心理状況を感じた。特に、ハロウィンに関しては、普段できない衣装、普段できない騒ぎ方も許されるだろうという空気感が漂っている。それが、ブームの爆発の後押しになったのだ。

2014年「アナと雪の女王」が大ヒットした。「ありのままの~」という歌を子供だけでなく、大人も歌った。今回のハロウィンにおいても、共通するものが見え隠れする。それは、将来の不安がありながらも、仕事やプライベートなど日常生活はできるだけ着実に過ごす中で、「自分のリミットを外しても良い時」を求めているムードだ。

こうした現在の日本人の心理状況にマッチしたこと、バレンタインと比べて参加できる人の層が幅広いこと、さまざまな企業が製品開発や販売促進プロモーションにも参入しやすいこと。これだけの理由が重なった日本のハロウィン。来年以降はますます盛り上がりを見せることは確実であろう。
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