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最新情報! ストレスと睡眠障害の深い関係

ストレス研究の最先端が発表される「日本ストレス学会」。今年の演題から、睡眠障害に関するものを3つご紹介します。夜型人間や仕事のストレスが強い人、歯ぎしりに悩んでいる人は、ぜひ、お読みください。

坪田 聡

執筆者:坪田 聡

医師 / 睡眠ガイド

学会
ストレスと睡眠障害の関係が、少しずつ分かってきました
今年の日本ストレス学会が、10月31日~11月1日に大阪で行われました。そこで発表された研究の中から、睡眠に関するものをピックアップしてご紹介します。

朝型人間になれない理由

早寝早起きをしたいのだけど、どうしても夜更かしで朝寝坊の生活から抜け出せない。こんな悩みを持つ人は、とても多くいます。これは単に、気合が足らないからでしょうか?

大阪大学社会環境医学講座が発表した、「 朝型・夜型と睡眠・生活満足度の関連性 」 には、生活時間を変えたい人のためのヒントが隠されています。

これまでの研究で、朝型人間と夜型人間 では、遺伝子が少し違っていることが分かっています。また、睡眠の質が悪いと、生活習慣病やうつ病、認知症などの病気になる確率が高いことも、明らかになりつつあります

夜の楽しみ
夜型の人が朝型に変わりにくいのは、理由があるのです
そこで大阪大学の研究グループでは、朝型の人と夜型の人では、睡眠の質や満足度に違いがあるのか、ということを調べました。

研究は、大阪市内のある企業の男性従業員187人を対象に行われました。この人たちを、早寝早起きの朝型、夜更かし朝寝坊の夜型、そして両者の中間型の3つのグループに分けて、アンケート調査が行われました。

その結果、夜型は朝型に比べて、睡眠の質と睡眠時間に対する満足度や、目覚めたときの爽快感、精神的な健康度が低いことが分かりました。しかし、生活全般や仕事、余暇に対する満足度では、夜型と朝型に明らかな差はありませんでした。

予想通り、夜型人間は、人生の3分の1を占める睡眠に関する満足度は、低いものでした。しかし、目を覚まして活動している時間には、十分満足しています。このことから、夜型の人は、長年の習慣を変える努力をしてまで、生活パターンを朝型にしたいという気にならないのではないか、と考えられます。

もし、あなたが朝型人間になりたいのであれば、「 あなたもできる! 早起きの習慣化 」 のシリーズを参考にして、「 なぜ早起きしたいのか 」 をはっきりさせると、成功の確率が高まることでしょう。

仕事の悩みは、ほどほどに

さわやかな朝
目覚めたときに、気分が良いですか?
ますます増える、社会的なストレス。上手く対処していかないと、知らず知らずのうちに溜まってしまい、心や体を壊すこともあります。

このストレスに負けないよう、体の中で頑張ってくれているものの1つが、ストレス・ホルモン とも呼ばれる コルチゾール です。コルチゾールは、腎臓の上にある小さな副腎の皮質から分泌されるホルモンです。

コルチゾールは、日中に襲ってくるストレスに対処するため、起床後30~60分のあいだに大量に分泌されます。この現象を、起床時コルチゾール反応(CAR)と呼びます。この反応は、ストレス状態をよく反映しているので、最近、注目を集めているものです。

これまでの研究では、休日に比べて平日の起床時コルチゾール反応が高いことや、不眠症患者さんのコルチゾールの1日総分泌量は、不眠がない人に比べて多いことなどが知られています。

仕事のストレス
仕事に関わり過ぎていませんか?
今回の日本ストレス学会では、久留米大学高次脳疾患研究所が、睡眠の質と起床時コルチゾール反応の関連を報告しています。

この研究は、20~50歳の女性大学職員を、睡眠に問題があるグループとないグループに分けて行われました。仕事によるストレスの程度を質問紙に記入してもらい、さらに、起床時の唾液に含まれるコルチゾールの量を測定しました。

その結果、睡眠に問題があるグループは、問題がないグループに比べて、仕事に対して思い入れ過ぎ(=オーバーコミットメント)の傾向が強く、幸福感は低いことが分かりました。

また、起床時コルチゾール反応は、休日には2つのグループに差はありませんでしたが、平日では睡眠に問題があるグループが、問題がないグループよりも低い値となりました。

今回の研究から、睡眠の問題を持つ人は、「 仕事に思い入れが強すぎる → ストレスが多い → 睡眠障害 → ストレスに対する抵抗力が低下 → 不眠 」 という悪循環に、はまり込んでいる実態がうかがえます。

そんなときは、せめて、蒲団に入るときには仕事のことを考えないようにしたり、休日には仕事を忘れて趣味や家庭のことに没頭したりして、ストレスや睡眠の問題を減らすことを心がけてみて下さい。


眠りながらのストレス解消法

歯ぎしり
睡眠中に歯ぎしりをする人は、大人で8%、子どもでは14~20%もいます
睡眠中の 歯ぎしり は、ベッドパートナーに迷惑をかけるだけではありません。

自分の歯を痛めてしまう危険性もあります。また、歯ぎしりが続くと、顎の関節が痛くなる 顎関節症 になってしまうこともあります。

歯ぎしりする原因は、まだよく分かっていませんが、ストレスと関係していると言われています。今回の日本ストレス学会では、大阪大学歯学研究科から、歯ぎしりとストレスの関係についての発表がありました。

この研究は、顎関節症がある患者さんとない患者さん、あわせて63名を対象に行われました。ストレスの強さは、唾液の中のクロモグラニンA とコルチゾールで測定しました。

クロモグラニンA は、ストレスが強いと量が増え、リラックスすると減る、たんぱく質の1つです。前述しましたが、コルチゾールはストレスと闘ってくれるホルモンの一種です。

研究の結果、睡眠中に歯ぎしりをする人はしない人に比べて、唾液中のクロモグラニンA の濃度が低くなっていることが分かりました。一方、コルチゾールの量は、歯ぎしりする人としない人とで、明らかな違いはありませんでした。

この結果から、睡眠中の歯ぎしりは、ストレス解消に役立っている可能性が考えられます。歯ぎしりは悪いことばかり、と言うわけでもないようですが、ベッドパートナーのためには、他のリラックス法を身につけてほしいものです。
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