不眠・睡眠障害/昼夜逆転・睡眠時間帯の異常

夜勤の寝不足を解消!睡眠障害予防と日中の過ごし方

【医師が解説】労働者の約2割が、夜に働いています。看護師や飲食店など24時間のサービスは消費者にとっては有り難いものですが、夜勤者は体調の管理が難しく、睡眠障害の原因にもなります。交代勤務や夜勤で悩まされる睡眠障害の原因と、眠気を解消する効果的な仮眠方法について解説します。

坪田 聡

執筆者:坪田 聡

医師 / 睡眠ガイド

24時間営業、深夜・交代勤務が睡眠障害の原因に?

交代制勤務

利用者には便利でも、働いている人の健康は?

いたるところに24時間営業の店が増え、それをサポートするために24時間体制をとる企業も多くなってきています。

平成24年の厚生労働省の「労働者健康状況調査」によると、交代勤務をしている人は労働者全体の9.8%で、夜勤勤務者は1.8%でした。

また、調査前の6か月間に残業も含めて、午後10時から午前5時の深夜に働いたことがある人は、21.8%もいました。この割合は、平成9年の3.3%、平成14年の17.8%、平成19年の17.9%から、右肩上がりで増えています。

これら交代勤務や深夜勤務をしている人は、地球の昼夜のリズムと覚醒・睡眠のリズムがずれているため、いろいろな症状が出やすくなります。特に勤務スケジュールと関連して、一時的に強い眠気に悩まされたり不眠を訴えたりする睡眠障害を、「交代勤務性睡眠障害」と呼びます。

日本での交代勤務性睡眠障害の頻度ははっきりしませんが、海外では研究が進められています。スウェーデンで1,100人の交代勤務者に行われた調査では、日勤に比べて深夜勤務で、寝つきが悪く夜中に目覚め、一度目覚めると再び寝入ることができないと訴える人が、6倍もいました。また、休息感がない人も6倍、勤務後に眠るとき騒音が気になる人は11倍もいます。睡眠時間も短く、平均で4.3時間と日勤の57%しかありませんでした。

体内時計が乱れ、毎日が時差ボケ状態に……

時差ぼけ

楽しい旅行で時差ボケならまだしも

交代勤務性睡眠障害の主な原因は、体内時計が狂ってしまうことです。これは、ジェット機で海外旅行したときに起こる時差ボケが、夜勤や交代勤務のときに毎回起こっているのと同じです。

仕事の時間に合わせて眠ったり目覚めたりしていると、外界の明暗リズムと睡眠・覚醒リズムがずれてしまいます。人間は何万年も前から太陽の動きを合わせた生活をしてきているので、遺伝子のレベルで明暗リズムと睡眠・覚醒リズムがリンクしています。これを急に変えようとすれば、体のどこかに無理が生じるのは当然のことです。

また、睡眠・覚醒のリズムは意識的に変えられても、体温やホルモン分泌など他の生体リズムは外界の明暗リズムに合ったままです。すると、目覚めているときに体温が上がらず、必要なホルモンの血中濃度も十分でないため、元気よく働くことができません。逆に、体温が上がって眠りにくい時間帯に眠らないといけないので、睡眠時間が短くなり熟睡感も悪くなります。

時差ボケについて詳しく知りたい方は、「海外旅行を120%楽しむための時差ボケ予防法・克服法」もお読みください。

勤務ローテーションの工夫が睡眠障害予防の第一歩

勤務ローテーションは体内時計に合わせましょう

勤務ローテーションは体内時計に合わせましょう

交代勤務や夜勤による睡眠障害を予防するためには、体内時計の狂いを最小限にし、さらに夜間勤務により蓄積した睡眠不足を、できるだけ早く解消することが大切です。

交代勤務のローテーションの組み方には、大きく分けて「正循環」と「逆循環」の2つの方法があります。正循環は日勤→夕勤→夜勤と、勤務が次第に遅い時間帯になる方法です。逆循環では、夜勤→夕勤→日勤と勤務時間帯が繰り上がってきます。

人間の体内時計は、24時間より少し長く約25時間です。このため、正循環は適応しやすく、逆循環では心身の不調が増えやすくなります。できることなら職場全体として、正循環でローテーションするように、勤務体制を組み直してみてください。

日勤や夜勤が続く日数にも、工夫が必要です。勤務時間帯が短い周期で変わる「ファースト・ローテーション」は、夜勤の連続日数を減らす効果があります。しかし、短い周期で睡眠時刻を調整しなければならず、夜勤後の休日が十分に確保しにくくなるため、次の日勤では時差ボケ状態になりやすい傾向があります。

これに対して、例えば「日勤5日→休日1日→夕勤5日→休日1日→夜勤5日→休日3日」のような「スロー・ローテーション」で勤務を組むと、睡眠時間を十分に確保しやすく、仕事中の作業能率を上げやミスを減らすことが期待できます。夜勤前には自宅で仮眠をとり、休日の午前中は屋外で太陽の光を浴びるようにすると、さらに効果的です。

夜勤明けの眠気対策には50~120分の昼寝が効果的

サングラス

夜勤明けにはサングラスがお勧めです

午後の仮眠は、夜の睡眠を先取りする働きがあります。ですから夜勤の開始日には、午後5時までに90分くらいの昼寝をしましょう。

これまでの研究で、50~120分の昼寝には夜勤中の眠気を減らす効果が認められています。また、わずか20分の仮眠でも効果があったとする報告もあるので、夜勤の前には少しでも眠っておくことが大切です。

目覚めたら、コーヒーや緑茶などでカフェインをとると、昼寝の後の眠気を早くなくしてくれます。

夜勤中にも、できるだけ仮眠をとりましょう。そうすれば、眠気が減って作業能率が高まり、注意力が保たれるので事故やミスも少なくなります。どの時間帯にどれだけの長さで仮眠を取ればよいのかは、まだはっきりしていません。職場の実情と自分の体調に合わせて、少しでも仮眠をとるのが良さそうです。このときも眠りから覚めたら、カフェインが入った飲み物や食べ物を摂りましょう。

強い光には、眠気を減らして覚醒度を上げる働きがあります。夜勤中の職場は十分に明るくしておき、仕事が終わったらサングラスなどで強い光を避けながら、家に帰りましょう。自宅でも遮光カーテンや厚手のカーテンで部屋を暗くして、午前中に数時間眠ります。翌日が日勤の場合は、夜の睡眠に悪影響を及ぼさないために、午後3時には起きましょう。午後に眠気が残れば、10分以内のうたた寝をすると楽になります。

このほか、ビジネスパーソンの睡眠力改善法については「働く人の睡眠が危ない!? 快眠で能率アップを目指せ」を、睡眠と覚醒のリズムがかなり問題な方は「昼夜逆転・睡眠時間帯の異常」を、仕事中の眠気対策については「眠気を覚ます方法」で詳しく解説してますので、あわせてご覧ください。
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