不眠・睡眠障害/むずむず脚症候群

今使えるむずむず脚症候群の治療薬3つの違い

2013年6月現在、健康保険で使えるむずむず脚症候群(レストレスレッグス脚症候群・下肢静止不能症候群)の治療薬は、3剤あります。今回はそれらの薬の特長や副作用、使い方について解説します。

坪田 聡

執筆者:坪田 聡

医師 / 睡眠ガイド

むずむず脚症候群(健康保険では「レストレスレッグス脚症候群」あるいは「下肢静止不能症候群」と呼びます)の治療に使える薬を、日本で承認された順にご紹介します。

ビ・シフロール錠(日本ベーリンガーインゲルハイム)

ビ・シフロール錠(日本ベーリンガーインゲルハイム)

ビ・シフロール錠(日本ベーリンガーインゲルハイム)

2010年1月から日本でも、むずむず脚症候群の治療薬が、健康保険で使えるようになりました。それが「ビ・シフロール(一般名:プラミペキソール)」です。

ビ・シフロールは、脳内物質であるドパミンと似た働きをする「ドパミン作動薬」の一種です。これまでは、ドパミンの働きが悪くなるパーキンソン病の治療薬として使われてきました。

実は、むずむず脚症候群も、ドパミンの異常が原因と考えられています。そのため欧米では、むずむず脚症候群の治療にまず、この薬が使われています。日本で行われた臨床試験でも、薬を飲み始めて1週間で効果が出始め、8割の人で有効でした。

ビ・シフロールで見られる副作用には、吐き気や胃の不快感など消化器系のものがあります。また、強い眠気や突発的に眠ってしまうことがあるので、服用中には自動車の運転や機械の操作、高所での作業など、危険を伴うことはしないように、注意が必要です。

大人では、ビ・シフロールを1日1回、就寝の2~3時間前に飲みます。薬の量は0.125mg から始めて、症状を見ながら1日0.75mgを超えない範囲で増やせます。多くの場合は、0.25mg ぐらいで症状が落ち着きます。ただし、副作用などを避けるため、少ない量での使用が望ましく、増量は1週間以上かけて行います。

レグナイト錠(アステラス製薬)

レグナイト錠(アステラス製薬)

レグナイト錠(アステラス製薬)

レグナイト(一般名:ガバペンチン エナカルビル)は、ビ・シフロールや次に述べるニュープロとは、全く違った働きをする薬です。もともとレグナイトは、抗けいれん薬あるいは痛み止めの薬として使われているガバペンチンを、改良したものです。ガバペンチンは脳内のGABA系神経の働きを高めて、けいれんを抑えたり痛みを和らげたりします。

ガバペンチンは、胃腸からの吸収され方が人によってまちまち、という欠点がありました。レグナイトではその点が改良され、吸収されやすく、血液中の濃度も長い時間保たれるようになりました。

レグナイトの優れている点は、むずむず脚症候群の症状を抑えることに加えて、不眠もしっかりと治してくれることです。ビ・シフロールは、脚の症状が取れたあとも不眠が残ることがありますが、レグナイトではそういうことが少なくなりました。

また、ビ・シフロールは、飲んでいるうちに効果が弱くなって症状がひどくなったり(症状促進現象あるいはオーグメンテーション)、飲むのを止めるとそれまで以上に症状が悪くなったり(リバウンド効果)することが多いのですが、レグナイトではあまりありません。

一方、レグナイトは、むずむず脚症候群に合併しやすい、足の周期的な運動(周期性下肢運動障害)には効きが弱くなります。また、副作用としては飲み始めの時期に、ふらつきや眠気が生じることがあります。そのため、飲んだ後に自動車などを運転することは、禁止されています。

レグナイトの飲み方としては、少ない量から初めて、効果や副作用を見ながら少しずつ量を増やしていく方法が、勧められています。具体的には、まず1日に1錠(300mg)から初めて、しばらく間をおいてから2錠(600mg)に増やすのが良いようです。腎臓が悪い人は、1日1錠までにしておきましょう。

ニュープロパッチ(大塚製薬)

ニュープロパッチ(大塚製薬)

ニュープロパッチ(大塚製薬)

2013年2月から発売が始まった「ニュープロ(一般名:ロチゴチン)」は、ビ・シフロールと同じく非麦角系ドパミンアゴニストです。ほかの治療薬2剤は飲み薬ですが、このニュープロだけは貼り薬です。

皮膚から薬が少しずつ吸収されるため、血液中の薬の濃度が1日中フラットに近く保たれます。そのため、脚の症状が夜だけでなく日中にも出る人に、使いやすい薬です。

ニュープロはビ・シフロールに比べて、症状促進現象が少ないことも特長です。ヨーロッパで行われた調査では、ニュープロを飲んだ人の5%にしか、症状促進現象が見られませんでした。

むずむず脚症候群で使うニュープロには、3種類の大きさがあります。まずは一番小さい2.25mgを、1日1回貼ります。薬を貼る場所は、肩・上腕部・おなか・おしり・太もものいずれかです。1週間ごとに2.25mgずつ増やして、最大6.75mgまで使えます。

ニュープロは副作用が少ない薬ですが、多くの人で貼ったところがかゆくなることが問題です。貼る前に、保湿クリームを塗るなどの対策が必要です。


【関連サイト】
むずむず脚症候群
ビ・シフロール錠
レグナイト錠
ニュープロパッチ
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