メンタルヘルス/(読み物) 有名人と心の病気

心の病気と有名人VOL6 バイ菌を恐れた大富豪

ハワード・ヒューズは、映画監督、飛行家、大富豪と華麗な人生を歩んでましたが、晩年には、バイ菌に対する強迫観念に取り憑かれました。

中嶋 泰憲

執筆者:中嶋 泰憲

医師 / メンタルヘルスガイド

写真は、 Hughes: The Private Diaries, Memos and Letters : The Definitive Biography of the First American Billionaire (Amazon.co.jp) から引用しました。
ハワード・ヒューズ

今回、登場する人物はアメリカの大富豪ハワード・ヒューズ(1905 - 1976)です。

ハワード・ヒューズは、1905年、テキサス州のヒューストンに生まれました。

彼の家は、油田開発に不可欠な掘削機を製造する会社をやってましたが、父親が亡くなってしまい、会社を継ぐ事になりました。
ハワード・ヒューズが18歳の時です。

その会社の豊富な資金を元に、彼は、さまざまな分野へ乗り出して行きます。


飛行機乗り・映画監督・実業家

飛行機に夢中だった彼は、自ら飛行機野郎となり、世界一周記録など、幾つかの世界記録を作りました。ハワード・ヒューズは映画監督としても大成功で、「ならず者」、「地獄の天使」などが彼の代表作です。実業家としては、航空会社のTWAなど多数の会社を所有し、巨万の富を築きました。

このように、信じられない成功を収めたハワード・ヒューズの身に何が起きたのでしょう?


エスカレートするバイ菌への恐れ

ハワード・ヒューズのバイ菌への恐れは1940年代に始まり、次第にコントロールが利かなくなったのです。

日常のさまざまな事に、バイ菌が付かないよう詳細な指示を、家人に出すようになり、一例として、浴室のキャビネットの補聴器(バイ菌が付かないよう封筒に入れてあります)の取り出し方を紹介します。

・浴室のドアのノブを回す際には、6~8枚のティッシュを用いる。
・次に石鹸の入ったキャビネットを新しいティッシュ6~8枚を用いて開ける。
・使用していない石鹸を取り出し、手を洗う。
・次に、補聴器の入ったキャビネットを最低15枚のティッシュを用いて開ける。
・補聴器の入っている封筒は、最低15枚のティッシュを用いて、両手で取り出す。


強迫神経症

このような彼の強迫的な症状は、強迫神経症と呼ばれます。彼は、強迫神経症の治療を受けなかった為、バイ菌への強迫観念に完全に支配されてしまい、バイ菌を恐れて、部屋に閉じこもり、人前に姿を出す事もなくなりました。


悲しい最期

ハワード・ヒューズは、病院へ向かう途中、自家用ジェットの機内で息を引き取りました。
病院へ運ばれた彼の遺体は、痩せこけていて、あたかも捕虜収容所から抜け出たかのようです。

かつての背の高い金髪のハンサムガイで、ハリウッド女優と噂のあった彼とは、その遺体が、あまりに違う事や、20年以上も人前に姿を見せていない為、誰も本人と確認できないので、FBIは、指紋を照合して、その遺体がハワード・ヒューズ本人であると確認しました。

『 次回は、強迫神経症の治療についてお話致します。 』


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